少子高齢化時代における、“生涯の相方”とは?『マリオ&ルイージRPG ブラザーシップ!』から学ぶ「兄弟の絆」
11月7日に発売された『マリオ&ルイージRPG ブラザーシップ!』は、実に9年ぶりとなるシリーズ完全新作。マリオとルイージが異世界にある「コネクタルランド」を冒険するアクションRPGです。 【画像全7枚】 今回の舞台は、大海原を漂流する浮島群。様々な特徴を持った島々を、ひとつの群島になるように接続していきます。島の中は謎解き要素がふんだんに散りばめられていて、このあたりは従来の「マリオ&ルイージRPG」シリーズを踏襲しています。 そして、今作でもマリオとルイージの兄弟が協力しながらゲームを進めるというコンセプトは健在。少子高齢化が止まらない日本において、この兄弟の活躍には「生きるためのヒント」が詰まっているのではないでしょうか。今回は世界一有名な兄弟の関係性を分析しつつ、「少子高齢化時代の家族の在り方」について考えていきたいと思います。 ◆「サザエさん型家族」が珍しくなった現代 マリオとルイージ。世界中の誰しもが知っている兄弟は、それぞれの性格に明確な違いがあります。 一言で言うと「勇敢な兄、臆病な弟」です。 何事にも恐れず、勇気を友にして大胆なジャンプを披露するマリオ。その一方、ルイージは突然の困難や心霊現象を前に怯えてしまうほどの繊細な気質で、僅かな時間兄とはぐれただけで泣き出してしまいます。「長男は頼り甲斐があり、次男は甘えん坊」というのは、封建制度以来の「兄弟のテンプレート」です。 しかし、そんな古典的な兄弟も今や少なくなってしまいました。 たとえば、『サザエさん』のような大家族・二世帯住宅は、原作者の長谷川町子先生が筆を執り始めた頃は割とどこにでもあるような家庭でした。それだけでなく、ノリスケさんのような親戚(この人はサザエさんから見た従兄です)が近所に住んでいるということも昔はよくありました。 しかし、今はそうではありません。一人っ子が多くなった上、生涯独身を貫くという人も珍しくなくなっています。サザエさんの家庭は、古き良きおとぎ話のようになってしまいました。 しかし、マリオとルイージに限っては「現代だからこそ」の価値があるのではないでしょうか。 ◆小さく少なくなっていく「家族」 今回はPHP新書『男性という孤独な存在 なぜ独身が増加し、父親は無力化したのか』(橘木俊詔)という本の内容を引用しながら、話を進めていきたいと思います。 この本では、男性そのものが昔と比較してどんどん弱くなっているということが各種データと共に解説されています。一例として、男性の生涯未婚率は女性のそれよりも遥かに高いといいます。 戦前と戦後の20年間ほどでは生涯未婚率は2%前後だったので、非常に低かった。換言すれば、男女ともに98%前後の人が一度は結婚するという「皆婚社会」だったのである。 しかし1960~70年代あたりから生涯未婚率は増加の方向を示し、90年代からは急上昇である。現代では男性が20%前後、女性は10%前後という高比率になっている。2015(平成27)年の速報値によると、男性が22.8%、女性が13.3%という高さにまで到達している。 (PHP新書『男性という孤独な存在 なぜ独身が増加し、父親は無力化したのか』橘木俊詔) そうなると、世帯あたりの人数も当然ながら減少していきます。 昭和時代の前半(すなわち1960年)あたりまでの平均人員が5人前後ということは、大きな家族であれば世帯人数が7~8人に達する場合もあるので、これらの家族が大家族の典型とみなしてよい。一方で、単身者、次男・三男を中心にした核家族も存在しているので、全部の家族が大家族であったなどとみなさないほうがよい。この時代は大家族と小家族の双方が存在していた。 しかし、1960(昭和35)年あたりから世帯人員は減少を始める。特に60年から70年の間に世帯人員が4.54人から3.69人と大幅に低下しているし、現在はなんと2.49人まで低下している。 (同上) 今やサザエさんのような大家族どころか、「兄弟姉妹が2人以上いる」ということも少なくなっているようです。 ◆独身者にとっての「生涯の相方」 しかし……いや、だからこそマリオとルイージの兄弟関係は現代人にとっての大きな参考になるのだと筆者は解釈しています。 結婚とは縁遠い現代の男性にとって、自身の兄弟姉妹は貴重な家族。そして、自分自身をよく知っている相棒です。もしもマリオがピーチ姫(もしくはデイジー姫)と結婚しない人生を選んだとしたら、「生涯の相方」は当然ルイージになるはず。 結婚というのは、全く見ず知らずの他人と交際を重ねてようやく辿り着く人生の通過点です。その道を選ぶよりも、生まれながらにして自分自身のことをよく知っている弟を座右に添えたほうが気楽でいい。ピーチ姫との友情に近い恋愛は、片手間にやっていけば十分だろう……なんて世界線があるかもしれません。 そしてそれは、ルイージにとっても同じです。 ◆臆病だけど、賢い弟 勇敢で何事にも能動的なマリオは、しかし時折ミスを犯します。 大ジャンプをしたのはいいけれど、それでも距離が足りずに高所から落下しそうになります。そんな時、上からルイージが手を差し伸べてくれます。それは兄弟だからこそできる絶妙なチームワークで、彼ら以外の人には絶対にできません。兄弟でなくては、ダメなのです。 一見、臆病で頼りないルイージは、兄よりも熟考できる性格。それが『マリオ&ルイージRPG ブラザーシップ!』では「ルイージセンス」という技能で表現されています。探索やバトルの最中、不利な状況を打破できるひらめきを発揮するのはルイージの役割です。これがなければ、何でも力押しする傾向があるマリオが窮地に陥ることも多々あります。 未婚を貫く人が多くなった現代、「最も気の知れた存在を生涯の相方にする」というのはマリオとルイージが我々に伝えてくれている知恵ではないでしょうか。 ◆大人だからこそ楽しめる作品 『マリオ&ルイージRPG ブラザーシップ!』は、子供だけでなく大人も楽しめる作品と言えます。 もしかしたら、大人だからこそ楽しめる作品と表現できるかもしれません。 今の時代、すぐ身近にスマホという優秀な通信機器があり、しかもそこからAIプラットフォームを利用することもできます。しかし、それ故に「誰が自分自身の味方なのか」「自分自身にとって本当に有益なことをしてくれるのはどこの誰なのか」ということが見えづらくなっているのではないでしょうか。 様々な情報が洪水のように押し寄せる現代、昔から身近にいる人が自分にとってのベストパートナーではないか。そうしたことを、ヒゲの兄弟は我々に優しく教えてくれるようです。 【参考文献】PHP新書『男性という孤独な存在 なぜ独身が増加し、父親は無力化したのか』橘木俊詔
インサイド 澤田 真一
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