玉木氏の騒動が振ってわいた国民民主と第2次石破政権の距離 人羅格
「手取り増」を掲げた同党の情報発信は若者らの人気を呼んでいる。「ネット」「若者」がキーワードである点は、東京都知事選での石丸伸二・前広島県安芸高田市長への追い風現象と通底する。 少数与党政権の維持は難しい。1994年、羽田孜首相の非自民政権は旧社会党が連立を離脱し、少数与党だった。約2カ月で退陣に追い込まれ、村山富市首相による「自社さ連立」が実現する。 自民が現在の少数与党を解消する最短コースは、来年夏の参院選に衆院選を重ね、「ダブル選挙」で勝利する展開だろう。 ただし、石破内閣でそんな強気戦術は望みがたい。だから「通常国会での当初予算成立などのタイミングで首相を交代する」ことが暗黙の前提になる。またも「刷新感」頼みだ。 首相交代にはそれ相応の状況が必要である。岸田文雄前首相が退陣したのは総裁選という節目があったためだ。玉木氏は「延命に手を貸さない」と強調するが、首相に引導を渡せるだろうか。 国民民主にとって石破政権は金の卵を生むニワトリだ。打倒して自公政権の新首相に交代すれば早期解散か、連立入り要請のいずれかが予想される。与党入りは当面、メリットに乏しい。 こうした事情から「103万円の壁」は自民、国民民主双方とも合意へ引力が働きやすい。 ◇ネット活用出遅れの立憲 自民は大幅引き上げをした場合に財源対策から別の「負担増」が生じる可能性や、高額納税者に恩恵が大きくなる点を強調することで、引き上げ幅圧縮を探りたい。ただし、玉木氏の求心力が醜聞などに影響されれば、協議の行方も不確実性を増していく。 立憲民主党も、ただちに石破内閣に退陣を迫る状況にない。野田佳彦代表も、早期の内閣不信任決議案の提出に慎重姿勢を示す。 政権交代を掲げて闘った同党だが、いま実現しても参院で「ねじれ」に直面して立ち往生するおそれがある。「衆院選はそこそこ勝ち、来年の参院選が勝負」というのが多くの幹部の本音だ。石破内閣が延命し、参院選に突入することは好都合ですらある。