見せた粘りの呉魂 延長力尽きるも温かい拍手 /広島
<センバツ2019> 見せた、粘りのイチクレ魂--。23日に開幕した第91回選抜高校野球大会で2年ぶり2回目出場の呉は、開会式直後の開幕試合で市和歌山(和歌山)と対戦した。九回にスクイズで同点に追いつく粘りを見せたが、延長十一回、2-3でサヨナラ負けした。白熱した好ゲームに、一塁側アルプス席を埋めた約3000人の大応援団は「ナイスゲーム」「夏も待ってるぞ」と大きな拍手を送っていた。【礒野健一、矢倉健次、隈元悠太】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 呉 00000010100=2 10001000001=3 市和歌山 (延長十一回) 2年前の初出場時と同じ開幕試合。その時は逆転勝ちしており、いいイメージを持ち、選手たちはグラウンドに飛び出した。 先発した沼田仁投手(3年)は初回と五回に1点ずつを奪われるが、粘りの投球で踏みとどまる。父篤さん(46)は「楽しんで投げていれば、勝利につながっていく」と見守った。 打線は六回まで無安打に抑えられるが、アルプス席の声援は途切れない。チアリーダーを率いる松田ソフィアさん(3年)は「どんな時も笑顔です」と応援。初出場時に控え内野手としてベンチ入りしていた上垣将吾さん(19)は、同級生らと観戦し「1本出れば流れは変わる」と後輩の奮起を期待した。 選手たちがその思いに応えたのは七回だった。2死二塁から池田駿選手(3年)が初安打となる右前適時打を放ち1点を返す。父和之さん(47)は「しっかり捉えた打球。流れが来たね」と、応援しゃもじを打ち鳴らした。九回には1死から沼田歩選手(3年)が右中間を破る三塁打を放つと、途中出場の真田和弥選手(同)が、倒れ込みながら球に食らいつき、スクイズを決め同点とした。真田選手は「歩が三塁打を打って『よっしゃー』と大声を出したら緊張がほぐれた」。父栄樹(しげき)さん(53)は「私の方が緊張した。よう決めてくれた」と喜んだ。 土壇場の同点劇に応援席は沸いたが、延長戦で力尽きた。しかし試合後の選手たちは夏に向け、聖地で得た収穫を胸に前を向いた。秋山達紀捕手(2年)は「どんな場面でも全力でバットが振れるようにしたい」。大会直前に右手を骨折し欠場した田辺舜治選手(3年)から、打撃手袋を託され出場した梅田利功(りく)選手(同)は「打撃も守備も全然足りない。今日の悔しい経験を生かし、甲子園に帰ってくる」と誓った。 ◇演奏で選手鼓舞 ○…最後まで力強い演奏で選手たちを鼓舞し続けた吹奏楽部のメンバーに、特別な思いを持って加わったのは、呉市立昭和北中の住吉修三教諭(55)=写真=だ。1998年に前身の高校から市立呉高校として再スタートした時、同校の音楽教諭だった住吉さんが校歌を作曲。自然豊かな郷土で新たな道を歩む若者の爽やかなイメージを曲にした。2年前は応援に来られず、この日が住吉さんの「初出場」。「甲子園で校歌が演奏できるとは夢のよう。精いっぱいトランペットを吹いて、選手を後押しします」と笑顔を見せた。