石段を照らす灯籠と夜景の共演 福岡県久留米市の高良大社で献灯祭
視界を遮る木々が少なく、石段そばにある展望所からは、長崎県や朝倉市の山々まで遠く見渡せた。眼下には九州自動車道を走る車のライトがS字形の曲線を描く。日が傾くにつれ、筑後平野に広がる街並みの表情も刻々と変化していく。
日没から20分ほどたつと、三日月の下に、きらめくような街の光が遠くまで広がっていた。灯籠と街明かりの共演。二つの”主役”による光の演出は、噂(うわさ)に聞いた通り圧巻の光景だった。 石段の上、特に手すりが設けられた中央付近が最も”絵になる”スポットだ。集まった人たちの狙いは同じ。自分が撮ったら、次の人に場所を譲る――。知らない人同士が“秩序”を保ちながら、それぞれに絶景を楽しんでいた。
絶景を思い出に
20時頃になると夜の闇は深くなり、灯籠の存在感が増していく。石段の途中では、灯籠と街明かりを背景に、友人らと記念写真を撮影しようとする人が増えてきた。しかし思い通りに撮れず、「顔が真っ暗になってしまう」と戸惑う声も聞こえてくる。
スマホのライトを使うか、灯籠に近づけば表情も分かるように撮れるのだが……。声をかけようかと悩んだが、くつろいでいる時間を邪魔するのも申し訳ない気がして、思いとどまった。
日没から1時間を過ぎると、境内の人影はほとんどなくなった。市街地まで下りて山を振り返ると、大きな鳥居が光っているように見えた。鳥居のライトアップ? 神職に尋ねると、献灯祭の間は、境内の建物に鳥居の形をした電飾を施しているのだという。最後に、その「鳥居を模した光」をカメラに収めて家路についた。
読売新聞