「かわいそうな人」「替えはきく」…首相襲撃事件で検事が被告に不適切発言、最高検が認定
和歌山市で昨年4月、岸田首相(当時)の選挙演説会場に爆発物が投げ込まれた事件で、最高検が、殺人未遂罪などで起訴された木村隆二被告(25)に対する検事の取り調べで不適正な発言があったと認定していたことがわかった。検事は、黙秘する被告に対し「かわいそうな人」などと発言したという。
木村被告は昨年4月に逮捕され、和歌山市の漁港で、衆院補選の応援演説に訪れた岸田氏らの近くに爆発物を投げて爆発させ、岸田氏らを殺害しようとしたとして同9月に起訴された。木村被告は取り調べで一貫して黙秘した。
事件は裁判員裁判の対象で、逮捕・勾留された容疑者の取り調べの全過程で録音・録画が義務づけられている。関係者によると、検事は同5月の取り調べで、被告が引きこもりだったことに触れ、「かわいそうな人」「木村さんの替えはきく」などという趣旨の発言をしたという。
弁護人は同5月、人格攻撃だとして、最高検に苦情を申し入れた。事実関係を確認した最高検監察指導部は、検事の発言に被告の人格を否定する内容が含まれているなどと判断し、不適正と認定したとみられる。
最高検は「個別の事件に関わることなので、答えは差し控える」としている。
検察の取り調べを巡っては、同様に全過程の録音・録画が義務化されている独自捜査事件でも問題が続いている。大阪地検特捜部が手がけた業務上横領事件では、検事が取り調べで「検察なめんなよ」などと発言し、机をたたいて責めたとして、大阪高裁が8月、特別公務員暴行陵虐罪で刑事裁判を開く「付審判決定」を出した。このほか、逮捕された容疑者側から「違法な取り調べを受けた」との訴えが相次いでいる。