女性とりこにする〝進化系おはぎ〟 色や形に華、材料で季節感
色はピンクや黄色、紫で一口サイズ。イチゴやナッツなど多彩な食材を使い、あんこを花のように絞る──。華やかで写真や交流サイト(SNS)映えする“進化系おはぎ”が若い女性を中心に人気を集めている。農家の加工品としても可能性が広がり、伝統食の継承にもつながると期待される。 【画像】見た目も華やかな〝進化系おはぎ〟 材料に特色も おはぎといえば、黒くて楕円(だえん)形で、ずっしりとした和菓子だ。特に定義はないが、“進化系”もあんこや米を使うのは変わらない。一方、①あんこに他の食材を練り込む②花の形や球形、大きさは一口サイズ③複数個を詰め合わせ、見栄えを良くする──といった点が大きく異なる。 日本あんこ協会によると、2010年ごろに大阪府内に“進化系”を扱うおはぎ専門店が登場した。以降は東京を中心に広がり、現在は都内に少なくとも10の専門店がある。大阪や名古屋といった大都市圏の他、地方にも波及しているという。
ブームの火付け役「タケノとおはぎ」
ブームの火付け役となったのが、16年に東京都世田谷区に開店した「タケノとおはぎ」だ。小川寛貴代表は、東京五輪を機に日本らしさを発信しようと、祖母のおはぎに着目。新たな層にも訴求するため、写真映えを意識し、あんこを花のように絞った。洋菓子のカップケーキから着想を得たという。 例えば、人気商品「ベルベットローズ」は、白あんにラズベリーピューレを練り込んだ赤いあんこをバラの形に絞る。あんこの甘さは控えめでラズベリーの甘酸っぱさを生かし、もち米のもちもちとした食感との独特の組み合わせが楽しめる。 購入客のほとんどは女性で、特に20、30代が多い。日替わりで5種類を用意し、価格は1個300円程度。手土産用に購入する人が多いという。小川代表は「かわいらしい見た目が女性に受けた。一口サイズで、いろいろな種類を食べられるのも魅力では」と話す。
〝バーガー〟式も
大阪市西区の和風カフェ「CHASHITSU time」で人気の進化系おはぎは、もち米であんこを挟んだ「おはぎバーガー」。もち米やあんこにはユズ、サツマイモといった具材を盛り込み、季節によって数種類を用意する。 同店では、購入客の男女比は大きく変わらず、男性は取引先への手土産用に購入する会社員も多いという。価格は1個300円程度。同店の和津田靖野さん(33)は「洋菓子よりも甘さが控えめなので、万人受けするのではないか」とみる。 “進化系”の波は農村にも広がる。香川県さぬき市の農家・六車亜弥さん(41)が経営する「農業工房かべっこ」。米の代わりに自家栽培のもち麦を使い、カボチャやほうじ茶など、季節に応じた具材を練り込んだ色とりどりのあんこで包む。価格は3個セットで550円だ。 六車さんは加工品作りを模索する中で、作りやすいおはぎに注目し、21年から同店で販売する。全国の専門店巡りで研究し、人気商品になった。若い女性だけでなく、「孫に食べさせたい」と高齢者も買っていくという。六車さんは「見た目や食感が珍しく、新しいおはぎとして受け入れられている」と話す。