都知事選の図式を読み解く 蓮舫氏の国政と絡める戦略に違和感 小池百合子氏は〝神通力〟落ちたが…現職の強み生かすか
【日本の解き方】 東京都知事選をめぐっては、蓮舫参院議員が立候補を表明し、小池百合子知事の表明時期が注目されている。 【イラストでみる】東京都知事選の主な候補予定者 蓮舫氏はどんな東京都を思い描くのか。出馬会見で「自民の延命に手を貸す小池都政をリセットしてほしい。その先頭に立つのが私の使命」「反自民党政治、非小池都政の姿勢で臨みたい」と意気込んだ。共産党の小池晃書記局長は「最強最良の候補者が名乗りを上げてくれた」と全面バックアップを約束した。 都知事選なのに、なぜか国政の「岸田文雄政権打倒」も掲げたのは、都民である筆者としてはかなり違和感がある。 まず、国、都道府県、特別区・市町村(基礎自治体)のそれぞれの行政には役割分担があることを整理しておこう。 国は、外交・国防、マクロ経済政策(金融政策、財政政策)、一部のミクロ経済政策(産業政策など)を担う。 基礎自治体は、保健医療や福祉、教育など住民生活に直結する事務を担う。 国と基礎自治体の間の都道府県は、広域交通などの社会インフラ整備や域内の基礎自治体間の財政調整などを担う。 地方行政では「ニア・イズ・ベター」という近接性原理があり、より重要なのは基礎自治体だ。しかし、昔ながらの中央集権思想が根強いために、都道府県のほうが基礎自治体より上位で「偉い」と思い込んでいる人が多すぎる。 実のところ、やる仕事は基礎自治体未満で、国の基本である外交・国防は担えないという意味で、国と比べるべきところはない。 実際、神奈川県知事は、財政力のある横浜市、川崎市、相模原市と3つの政令指定都市を抱えており、存在感は限定的だ。 ただし、東京都知事は、一般会計予算8・4兆円、特別会計と公営企業会計を合わせた全体の予算規模は16兆5584億円にのぼる。巨額予算とともに23特別区の財政調整制度を牛耳り、日本の首都でもあることから、それなりの存在感がある。 多くの都民は所得が比較的高く現状に満足しており、現状維持を望む傾向がある。このため都知事選では現職が出馬して負けたことはない。 東京都は、基礎自治体がしっかり仕事をしているので、都知事は〝お飾り〟であっても問題は小さい。下手な仕事をするくらいなら、余計なことをしないほうが批判されにくいほどだ。