逝去を機に新聞業界のデジタルシフトが加速!? 「最後の独裁者」ナベツネの功罪
「軽減税率が対象なのは新聞紙の購読料なんです。デジタル版で新聞を契約していても対象にはなりません。新聞に軽減税率が適用されたのは活字文化の維持のためとされていますが、だったらデジタルだって同じこと。"大きな力"が働いたとしか考えられません」(全国紙経済部デスク) 他紙のようにデジタルシフトに走れば、約6600店もの新聞販売店は不要になる。「新聞販売網」というイノベーションを起こした渡邉氏にとって、それは自身の否定につながる。渡邉氏は販売総会で、「新聞販売店が物流を担えないか」などと語り、あくまで「新聞販売網」に依った経営戦略を練ろうとした。 渡邉氏の後継者、読売新聞グループ本社の山口寿一社長も、渡邉氏の意向には逆らえない。渡邉氏同様、「販売第一主義」を掲げ、「紙は一覧性に優れる」「紙の新聞は報道と言論を伝える様式として最適」などと社内外で語っている。 「実はみんな内心『もう紙じゃないよね』と思っていますが、そんなことは社内では口が裂けても言えません。主筆は絶対的な存在であり、権力そのものです。役員から末端まで社内は忖度の嵐です」(読売関係者) ■新聞界の再編はあるのか? 新聞販売店の減少も止まらない。東京商工リサーチの発表によると、2024年1月から10月の新聞販売店の倒産は40件で、年間最多を更新中という。 「渡邉主筆は新聞界の象徴でした。今後、新聞のさらなるデジタル化、それに伴う新聞販売店倒産の流れは止めようがありません」(前出の読売関係者) だが、このまま新聞のデジタル化が進んだとしても、新聞界を取り巻く環境が改善するとは言い難い。 「日本の新聞社は収益の大部分が紙による販売収入であり、基本的に紙に依拠したビジネスモデルなんです。デジタル化するということは、販売店はもとより印刷部門も関係従業員も不要になるということ。読売新聞はまだ体力がある方ですが、毎日新聞、産経新聞が危ないとはずっと言われています。世間でホンダと日産の経営統合が話題ですが、新聞界も大きな再編が起こるかもしれません」(前出の全国紙経済部デスク) 渡邉氏という「巨人」が去った後の新聞界が注目される。 文/山本優希 写真/時事通信、山本優希