中川翔子のエッセイ「道徳」教科書に掲載 ヒカキン、藤井聡太、大谷翔平も登場……エンタメ化する背景は?
■中川翔子の文章が教科書に掲載 タレントの中川翔子がXを更新。光村図書が刊行する今年度の小学6年向けの「道徳」の教科書に「『隣る人』としてよりそう」というメッセージが掲載され、さらに教育出版の来年度の中学2年向けの「道徳」の教科書には「心のアンテナ」という文章が掲載されることになったと発表した。 【写真】業界発の試み! 中川翔子による「オリジナルデザイン通貨」(翔龍コイン)はどんなデザイン? 中川は「未来を紡ぐ子どもたちがなにかを見つけてくれたら嬉しいです」と述べ、「生きているうちに教科書に載る日が来るなんて思わなかった」「人生に無駄はないなと感じています」と想いを語った。 近年、「道徳」の教科書は、子どもたちに人気の高いタレントやスポーツ選手を誌面に起用する傾向が強まっている。東京書籍が刊行する令和7年度版の道徳の教科書(中学3年向け)には、YouTuberのヒカキンをはじめ、棋士の藤井聡太、野球選手の大谷翔平のメッセージが掲載されるという。 こうした傾向を、教科書のライト化が進んでいると語る人もいる。しかし、生徒にとって親しみやすい人物や憧れの人物を起用すれば、道徳がより身近に感じられるだろうし、学習効果も高いだろう。特に、中川翔子の実体験に基づく文章やメッセージはネット上でもたびたび共感を呼んでおり、起用にふさわしいという声が上がっている。教科書の選定はいつも話題にるが、教科書を扱う出版社としては、学校側から選ばれるよう話題性のある人物を取り入れることが必要という背景もあるだろう。 ■教科書、表紙がかわいくなっている? また、教科書の表紙は、イラストレーターにとって重要な活躍の場になっているようである。中川の文章が掲載される教育出版の令和7年度版「中学道徳 とびだそう未来へ」で、表紙イラストを手掛けるのはイラストレーターのみずすである。 Gakkenの令和6年度版「新版 みんなのどうとく」はいつかが、光村図書の令和7年度版「中学道徳」の表紙は尾崎智美が担当している。いずれも人気イラストレーターであり、優しいタッチの絵柄が魅力だ。筆者が小学生の頃には考えられなかった、親しみやすい教科書に仕上がっている。 教育芸術社の令和6年度版『小学生の音楽』の表紙は、京都アニメーションによってアニメ化もされた漫画『日常』などで知られる漫画家・あらゐけいいちが担当している。あらゐは表紙のみならず、本文に登場するキャラクターのイラストを担当。『日常』のキャラ、東雲なのを思わせるキャラも登場するなど、ファンにはたまらない教科書となった。 教科書に漫画を載せることに情熱を燃やした漫画家といえば、『釣りキチ三平』で知られる漫画界の巨匠・矢口高雄である。道徳の教科書にエッセイ集『ボクの学校は山と川』『ボクの先生は山と川』に収録された文章がイラストと漫画も合わせて採用されたとき、矢口は大いに喜び、「『害虫』と批判された漫画が教科書に載る。『やったぜ』と思ったね」と語っている。 教科書にかわいらしいイラストや漫画が載るのは、今や普通のことになり、各社そのクオリティを競っているようである。そして、教科書という少々特殊な出版物は、多くの子どもたちの目に触れるだけに、タレント、漫画家、イラストレーター…… あらゆるクリエイターにとって特別な存在なのかもしれない。
山内貴範