『スーラージュと森田子龍』兵庫県立美術館で 「画家」と「書家」の出会いと交流を約50点で紐解く
フランスのアヴェロン県と兵庫県との20年をこえる友好提携を記念し、アヴェロン出身の画家ピエール・スーラージュ(1919-2022)と兵庫出身の書家・森田子龍(1912-1998)の交流に焦点をあてた展覧会が、3月16日(土)から5月19日(日)まで、神戸市の兵庫県立美術館で開催される。 【全ての画像】『スーラージュと森田子龍』広報用画像(全4枚) スーラージュは、第二次世界大戦後のパリにあって、黄土色や褐色の地色に灰色や黒のダイナミックな線で構成した作品で評価を高めた抽象画家。1970年代末からは、ひたむきに「黒」を探求し、大きな刷毛で厚く塗った黒の色面に溝を施すことで、微妙な光や反映を生み出す作品を制作し続けた。 一方、森田子龍は、新しい書のあり方を探求すべく、同志とともに前衛書グループ「墨人会」を結成し、戦後日本の前衛書運動を牽引した書家。1950年代から60年代にかけては海外にも積極的に進出し、造形芸術としての前衛書を世界に広めた。 画家と書家のふたり展は意外な組み合わせに感じられるかもしれないが、戦後まもない時期には、海外の抽象画と日本の前衛書には、国境やジャンルを超えて互いに共感するところがあったという。1951年に森田が創刊した書芸術総合誌『墨美』でも、欧米の抽象絵画が積極的に紹介されており、森田自身もモノクロームの作品を描く画家たちのことを「白黒の仲間」と呼び、そのような仲間ができることは喜びであり、励みになったと述べているのだとか。 そして、スーラージュと森田の間には、1950年代から直接的な交流もあった。『墨美』を好んで見ていたスーラージュが、自身の作品写真10枚を掲載用に提供してくれたのだ。1958年に初来日したスーラージュは、森田らと直接に意見を交わし、また1963 年には、今度は森田が渡欧の際にパリでスーラージュ夫妻と再会を果たしている。画家と書家のふたりは、交流を通じて互いの表現の共通点と相違点について考えを深めたという。 スーラージュ美術館の全面的な協力により開催される同展は、このふたりの作品を合わせて約50点と書籍や日記などの資料を通して、芸術家の出会いを考えるものだ。国際交流は何をもたらし、文化的なアイデンティティはいかにして生まれるのか。そうしたことにも思いが至る、興味深い展覧会である。 <開催概要> 『スーラージュと森田子龍』 会期:2024年3月16日(土)~5月19日(日) 会場:兵庫県立美術館 企画展示室