韓国のフィリピン人家事管理士モデル事業、管理士たちの三重苦に対する懸念【コラム】
2022年6月から施行されている家事勤労者法(家事勤労者の雇用改善などに関する法律)は、家事労働を「家庭内で行われる清掃、洗濯、厨房の仕事と、世帯構成員の保護や養育など家庭生活の維持と管理に必要な業務」と定義する。家事労働が一般の家事業務と子どもの世話に分化したのは2000年代以降のことだ。両方ともやるのは業務が過重で、それぞれ専門性が求められるからだ。業界では、少子化で子どもを一人だけ持つケースが増えるとともに、子育てに対する関心が高まった2005年を前後して業務が分化したと考えられている。 このようなすう勢は、韓国標準職業分類の変遷史にも表れている。標準職業分類は1963年に作られ、その後、国内の産業構造と職業相の変化、国際基準などを反映して、これまでに8次にわたる改正を経てきた。1966年の1次改正資料では、家事労働者は「家事婦」と「家庭使用人」として掲載されている。家事婦は「個人の家庭で調理、洗濯、清掃およびその他の雑役を行うことにより、主婦を助力する仕事」を担う人で、食母、針母、乳母などが細分化された職業として列挙されている。その他の業務を行う家庭教師などは、家庭使用人として分類されている。1970年の2次改正では、「家政婦および他に分類されていない家事サービス従事者」と一つにまとめられた。これには女中や、保母だけでなく、旅館の仲居、俳優の衣装を担当する人なども含まれていた。宿泊・飲食店業の発達で、家事サービス概念は個人の家庭に限定されることなく、幅広く通用したとみられる。その後、分類がさらに細分化したことにより、2000年の5次改正からは個人の家庭と宿泊業などの従事者が分離されはじめた。現在の「家事ヘルパー(Domestic Chores Helpers)」と「育児ヘルパー(Infant Rearing Helpers)」が分離されのは2007年(第6次改正)からだ。この育児ヘルパーは、1960年代の単に乳を飲ませた「乳母」とは異なる概念で、ベビーシッターや幼児世話人などとも呼ばれる。 9月から実施される政府の外国人家事管理士モデル事業に参加する100人のフィリピン人労働者が、今月6日に入国した。だが、彼らの業務範囲には曖昧な面があるため、ともすれば過重な労働を押し付けられるのではないかとも懸念されている。入国者たちは全員がケア資格(Caregiving NC2)の所持者だ。この資格はケア業務、子どもの発達過程、応急措置の要領などに関する780時間以上の教育課程を履修して取得できる。昨年、韓国政府は家事と育児の両方を担わせることを望んだが、フィリピン政府が難色を示したことで、両国の交渉が一時中断してもいる。フィリピンでは二つの職務を明確に区分しているが、韓国政府は二重に負担させようとしたのだ。 結局、韓国の雇用労働部とフィリピンの移住労働者省が結んだ両国の了解覚書(MOU)には、子どもの着替え、入浴、おむつ交換、食事の手伝い、子ども部屋の掃除などの子どもの世話業務を基本とするものの、「同居家族のための付随的で軽い家事サービス」が追加された。政府から選定されたサービス仲介機関「代理主婦」は、付随的業務の例として、6時間以上のサービスの場合、大人の服の洗濯、食器洗い、掃除機やモップを用いる床掃除などは可能で、ゴミ出しや大人の食事の調理などは不可能だと案内している。だが、付随的業務の範囲がどこまでなのかをめぐっては対立の素地が残っている。これについて韓国労働研究院のチョ・ヒョクチン研究委員は、「政策決定者は、現場で職務がどのように分離されているのかを知らなかったのではないかと思う」とし、「利用者がより多くのサービスを要求し、家事管理士がこれに応じた場合は、適切な追加料金が支払われるよう、政府はガイドラインを提示すべきだ」と述べる。 加えて政府は「利用者順守事項」と題する教育映像で、「フィリピン人はよく笑い、人に対して怒らないという特徴があるため、常に明るくて親切だ」と説明している。彼らが「感情労働」まで求められるのではないかと懸念するのは、取り越し苦労だろうか。 ファンボ・ヨン論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )