新課程共通テストの専門家予測 難関大の志願者が増加
◆探究活動が、大学選びに影響
学部系統別の志望動向では、コロナ禍で志望者が減っていた外国学、国際関係学、社会学(観光学)の人気が回復し、これまでのように理系に志望者が偏る傾向は落ちついています。ただし、総合情報学系統は根強い人気を維持しており、25年度入試でも国公立大は志望者が大幅に増えています。 注目は農学系統です。国公立大は前年比106%、私立大は同110%と志望者が増加しています。その理由を谷本センター長は、次のように話します。 「高校の授業に導入されている探究活動の影響だと思います。農学は学問の分野が広く、探究活動のテーマと関連することも多いです。高校の探究活動で興味関心を抱いた生徒が、さらに農学を深めたいと関心を示しているのではないでしょうか。従来の大学選びは、たとえば将来、医師や弁護士になりたいという希望から逆算して進路を考えるケースが多かったのですが、逆に自分のやりたいことが明確にあって大学を選ぶ生徒が増えてきました。そう考えると、探究は高校生のキャリアに大きな影響を与えていると思います」 25年度は、文部科学省の後押しを受けて複数の大学が情報系の学部を新設したり、定員を増やしたりしています。福井県立大は、ユニークな恐竜学部を新設します。理工系の女子枠も拡大され、東京科学大(旧・東京工業大)が女子枠を149人に拡大するほか、福島大、茨城大、新潟大、滋賀大など複数の国立大が女子枠を新設したり、拡大したりします。 入試本番直前の受験生に谷本センター長は次のようなアドバイスを送ります。 「入試改革の過渡期で環境の変化が激しく、不安に思うことも多いでしょう。でも、将来の目標や社会とどう関わっていきたいのか、その原点に立ち戻って大学入試に臨んでほしいと思います。確固たる志望動機がある受験生は、良い結果につながるケースが多いのです。最後まであきらめずに、自身の志望を貫いてほしいですね」 プロフィル 谷本祐一郎(たにもと・ゆういちろう)/ベネッセコーポレーション学校カンパニー教育情報センター長。2007年ベネッセコーポレーション入社。九州支社で大分県、熊本県、宮崎県の高校営業などを担当し、16年から東北支社で学校担当の統括責任者。19年から現職。講演会や研修会の実績も多数。大学入試の分析、教育動向の読み解きや、全国の高校教員向けの各種セミナーを企画し、情報発信を行っている。
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