セレクトショップ販売員、百貨店外商、ヘアサロンオーナー 一流たちに学ぶ“稼ぐ接客”の極意
また、「仲さんがすごいのは、あくまでもお客さまが必要とするアイテムを起点にコーディネートを考えるところ」と小野里CEOは紹介する。一般的な販売員は、自分に似合うアイテムでコーデを組みがちだが、仲さんは顧客データに基づいて投稿内容を決める。顧客のEC上における回遊動線をたどり、どの投稿を見て購入に至ったかを分析。考察結果をもとに、新たな投稿を制作し、日々PDCAを回していく。だからこそ、「顧客の『欲しい!」を誘発するコンテンツを作ることができている」のだとした。
外商員は“お客さまのプロ”
続くセミナー第2幕では、顧客ロイヤリティーの向上をテーマに、阪急阪神百貨店で外商員を務める後藤大祐さんが登場。顧客の懐に入り込む術と共に、同社の外商員史上最高の個人売り上げを叩き出すに至るまでを語った。 そもそも外商とは、1人のVIP顧客の要望を叶えるために、マンツーマンの接客を行う仕事。商品を紹介するだけでなく、百貨店の枠組みを超えたおもてなしとして、高級ホテルや海外での催事を企画することもある。
「外商は、接客のプロである以上にお客さまのプロ」。後藤さんは何よりも第一に、顧客との信頼獲得に励んできた。現在、外商員歴約9年になるが、駆け出しの頃は「見ず知らずの外商員に会いに店舗に足を運んでくれる人などいないため、ひたすら自宅訪問して顔を覚えてもらうようにしていた」と振り返る。そして、どれだけ夜遅い時間に連絡が届いたとしても迅速な返信を心がけ、顧客が深層心理で抱いている要望に寄り添う。例えば、コロナ禍で友人との交流が思うように取りづらくなっていた顧客には、友人とのコミュニケーションの場として話題の高級ホテルを手配し、さらにはホテルの担当者と連携してオリジナルの食事メニューを振る舞った。6歳の娘を持つ顧客から「とある大人気ブランドのハンカチがどうしても欲しい」という声が届けば、ECサイトでの発売日に何人もの自社スタッフを総動員して要望を叶えた。「商品以外でも顧客の“喜び”を模索すると、将来売り上げとして返ってくる」と後藤さん。外商の世界においては「何を買うか」よりも「誰から買うか」が大事であり、底なしのおもてなし精神こそが顧客の心をつかむための秘けつであると語った。