日本最強のラノベ、南総里見八犬伝の裏と表を描いた超大作映画『八犬伝』を、観た!
【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】
まず、筆者は「“付加価値”が、ない限り映画は2時間までに収めるべき」と、考えています。 “付加価値”の例としては「ボヘミアン・ラプソディの奇跡のライブ20分を完全再現」。 ボヘミアン・ラプソディは約2時間20分の作品なので、丁度この20分が最高の付加価値になっている。 映画『八犬伝』予告編 で、今回観た「八犬伝」は149分、つまり2時間30分ほど。 「30分の付加価値があるか見定めねば」と、八犬伝も、馬琴も北斎も大好きな筆者が、鼻息荒く劇場に乗り込んできました。 付加価値だらけでした! ストーリーは「八犬伝」そのものの場面をダイナミックに描くパートと、そのストーリーを話し合う役所広司さん演じる滝沢馬琴と内野聖陽さん演じる葛飾北斎を取り巻く人間ドラマ。 2つのパートを行き来することで、音楽のアルバムのように、ロックからバラード、ポップス、プログレの様に、場面が移り変わっていくので、飽きることなく2時間半過ごすことが出来ました。 馬琴と北斎のやりとりは、まるで「江戸時代版 バクマン」アクションはるろうに剣心だし、海戦のシーンはハリウッド映画と遜色なく、CGもゴジラぐらいバンバン使う! クライマックスに八人の剣士が揃ってからは、戦隊モノか、刀剣乱舞かと思うような絢爛さ。 例え話をいっぱい出しましたが、これこそがまさに言いたかったことで「江戸の書物から今のトレンドまで全部取り入れて、観たことのない新しい作品を生み出した監督の凄さ」。 アンテナの張り方や、知識の研鑽がハンパないのだな、と感じました。歌舞伎とかも出てくるし。 劇中、馬琴と北斎が、同じく筆者の大好きな鶴屋南北と出会うシーンがあるのですが、ここの演出が痺れた! おっさんがじっと3人で喋ってるだけなのにあんなに楽しめることは、脚本、演出、演技、撮影など映画チーム全体の勝利だったと思います。 役所さんと、内野さんの、長年を経て老けていく演技も圧巻! もう、なんか「ずっと観てたいから、2日間昼夜上映でやってくれ!」という気持ちだったのですが、ラスト。 「こう終わらせたか」 このひと言しか出ないほど感動しました。 ちょっと長い作品ですが、それだけの時間を費やす価値のある大傑作なので、トイレに行っておくのを忘れずに劇場で楽しんできて下さい。