「踊る大捜査線」が日本の映画興行に起こした革命 90年代の邦画がいかに惨憺たる状況だったか
だが「踊る大捜査線」がテレビと映画の境界線を突き崩し、両者が渾然一体となって作品作りをする文化を生み出した、その成果が今に続いている。ROBOTと共に映画を作ってきた山崎貴監督は、東宝のIPであるゴジラを原点以上に回帰させた「ゴジラ-1.0」でアメリカ映画界に切り込んだ。山崎氏のアカデミー賞受賞の元を辿ると「踊る大捜査線」があると言えるかもしれない。 この秋に公開される「踊る」シリーズの2つの映画は、室井慎次が主人公。「支店」つまり湾岸署の現場で事件と戦う刑事青島が、「本店」つまり警視庁の室井に警察を良くしてくれと言った、その約束を果たせるかの物語らしい。テレビと映画を2人の関係に見立てると、テレビは映画界を良くしていくのか、そんな力はもう残ってないのか。
私は、テレビが映画のためにできることはまだあるし、力を発揮してほしいと思う。いや、当時とは別の意味でテレビと映画は渾然一体となりつつある。もはやどちらが上か下かではなく、新しいものづくりに業界の壁を超えて取り組むべき時なのだと思う。
境 治 :メディアコンサルタント