【プレミア12】高橋宏斗の158キロ快投を手放しで喜べない中日サイド 〝メジャー志向〟の加速を懸念
野球の国際大会「プレミア12」で連覇を目指す日本代表は、スーパーラウンド初戦となった21日の米国戦(東京ドーム)に9―1で逆転勝利。国際大会25連勝の原動力となったのは、4回無失点で8奪三振の快投を披露した先発の高橋宏斗投手(22=中日)だ。ただ、侍ジャパンに送り出した球団サイドは手放しでは喜べない一面もあるようで…。 高橋宏は初回からエンジン全開。自己最速タイとなる158キロの直球と高速スプリットで米国打線をねじ伏せると、打線は小園(広島)の2発を含む3安打、7打点の大活躍で劇勝した。 右腕が米国戦で登板したのは世界一に輝いた昨春のWBC決勝以来とあって「やっぱり緊張感は中継ぎと違った。何時(午後7時)にプレーボールするところに合わせるのは責任感のあるポジション。それ(先発登板)は一人しか味わえないのでとても貴重なこと。今後もこのユニホームを着て先発のマウンドに上がりたい」と力を込めた。 オフの自主トレで師事する山本は昨オフにドジャースへ移籍。師匠を慕う高橋宏もメジャー挑戦の夢を抱く。そうした状況もあって、高橋宏の好投に中日側は複雑な思いも抱いている。「WBCでは中継ぎでトラウトらを三振に斬って注目されたけど、今度は先発でも問題ないところをアピールした。メジャー関係者らの目の前でこれだけのピッチングを見せたら、ほっとけないのでは」。ポスティングシステムを利用し、早々と海を渡ってしまうことを危惧しているのだ。 今オフにはロッテ・佐々木朗希投手(23)が契約金や年俸総額が制限され、マイナー契約しか結べない「25歳ルール」で移籍を目指している。MLB側では争奪戦の様相を呈しており、別の中日関係者は「宏斗も球団にほとんどメリットのない25歳以下でのポスティングを訴えるようなことにならなければいいが…」と頭を抱えている。 この日は約20球団ものMLBスカウトがネット裏から視察。これに高橋宏は「あまり試合中は意識していないですけど、常に高いレベルで野球をやりたいと思っているので、そこのレベルに少しでも近づけられるように頑張りたい」と話したが…。中日側にとって4年目右腕の活躍は喜ばしい半面、流出危機にさらされるだけに〝ジレンマ〟も抱えているようだ。
霞上誠次