青山学院が起死回生のビッグプレーで昇格へ前進 立役者はDL「たまたま僕のところにボールが…」無我夢中に49yd走った
悪コンディションの中、平常心を保ったQB小川
青学オフェンスはQB小川の高いパス能力を生かすパッケージが大きな強み。しかし、天候などの条件によってこれに制約が生じた。そんな中でボールコントロールで苦しんだが、粘り強く戦った青学が日体をわずかに上回った。 小川は言う。「早いうちから試合が雨になりそうなことはわかっていたので、最悪の想定もしながら平常心を持ってやっていこうと皆で準備してきました」。チームとして浮足立ったわけではなかったが、前節までと違うコンディションには苦しんだ。 「(第4Qで)4thダウンが取れなかった時は、またボールが回ってくることを信じて鼓舞しあっていました。サイドラインでボールを投げ込んでるときに歓声が聞こえてきて、中を見たら諏訪が走ってて......」 奇跡的な状況に周りが浮ついてるようにも感じたが、小川自身は平常心を持ってフィールドに入っていた。オフェンスがなかなか思うように進まない中で、ディフェンスが作ったチャンスを決勝点につなげることができた。 「去年までは先輩に迷惑をかけたくないという思いが強かったんですが、今年はなんとしてもTOP8に上がりたいと思ってやってきました」。そう言う小川の目には、光るものがあった。 去年の日体大戦は、体調不良で試合前日にチームに戻った。思うようなプレーができず、悔しい結果になっていた。その意味でも、この試合にかける気持ちは言葉にし尽くせないものがあった。 「良い仲間に恵まれたなあ......」。小川は静かにそう言った。 両チームの攻撃獲得距離は、青学の136ydに対して日体大は108yd。ファンブルは青学の3回1ロストに対して、日体大は4回1ロスト。反則は青学が9回73yd、日体が3回25ydと差がついた。反則による罰退に苦しみながら、勝負どころで日体大のミスを得点につなげた青学が、紙一重の勝負をものにした。
ハードタックルにQBサックも 諏訪が大暴れ
この日の青学勝利の立役者は、DLの諏訪だ。前半からハードなタックルを連発し、第3QにはQBサックを記録。加えて第4Qには起死回生となるファンブルリターンを見せた。まさに大暴れした諏訪は、試合後に感極まる様子でこう話した。 「ここまでリーグ戦を勝ち進んできて、日体にはこれまで一度も勝ったことがなかったこともあり、チームも自分自身もとても気合が入っていました。一昨年、去年はODK(オフェンス、ディフェンス、キッキング)すべてでビッグプレーを起こされて、その流れを変えられずに負けていたんです」 だから今年はODK全てを見直し、三位一体を意識して春から徹底してファンダメンタルを強化してきた。諏訪個人は、ウェートにこれまで以上に注力してフィジカル強化に取り組んできたという。 「トイメンの大野(恒、4年、明法)君には、去年は手も足も出ませんでした。最終学年の今年は絶対にリベンジしてやるぞと思って、練習でも最後の1回まで徹底して追い込んでやってきました。今日は大野君にも太刀打ちできたかなと感じています」 自分だけだと甘さが出てしまうから、同期や後輩、スタッフも巻き込み徹底して己を追い込んできた。それが試合結果につながった。 諏訪以外も、ODKがそれぞれ準備してきたことをやり切った。 粘り強いブロック、ロングゲインを許さないタックル、ビッグプレーをさせないカバーを、試合を通して徹底した。 「ダブルチームで相手に押されることもありましたが、去年より踏ん張ることができました。第3Qにスイムからキャリアをタックルできたときは気持ちよかったです。第4Qのボールをリターンしたシリーズは、本来、中のDLはボールに絡みづらいですが、DEが相手のボールをこぼすのを信じてやっていたら、たまたま僕のところにボールが飛んできてくれて」 49yd。何も考えられず、無我夢中で前に走った。 「TDまでは行けませんでしたが、オフェンスにボールを回せてよかったです。やってくれると信じてました」 3連休初日の20時32分。試合後まだ小雨が残る中、諏訪は興奮を抑えながら冷静に言葉を選んだ。
創部史上初のTOP8へ残り3戦「一丸で勝ち抜く」
残りのリーグ戦はあと2試合。TOP8との入れ替え戦、チャレンジマッチ出場に向けて大きな1勝を上げたが、まだ出場資格となるBIG8上位2位が確定したわけではない。諏訪は言う。 「成蹊大学、駒澤大学と、リーグ戦は続いていきます。相手がどうだとか、順位がどうだとかありますが、まずは1戦1戦しっかり戦うことに集中したいです。青山学院大学LIGHTNINGは、選手、スタッフ、コーチ、応援してくれる方々と一丸となって、勝ち抜いていきます」 その先のチャレンジマッチも勝ち切り、創部史上初のトップリーグ昇格を果たす。
北川直樹