<センバツ>ホームランボール「一筆入魂」 打者の名入れ贈呈、元球児ペン握る センバツ
日本高校野球連盟は、甲子園のホームランボールに日付などを書き込んだうえ、記念品として打者に贈っている。そのペンを握るのは、日本高野連評議員で岐阜市在住の見崎(みさき)仁志さん(64)。自身もかつては高校球児で「苦しい練習を乗り越え出場した選手たちのことを思い、一球一球に心を込めて書いています」。時代を締めくくる本塁打を誰が放つか注目しながら、試合を見つめている。 【今大会の全ホームラン】1試合2発 山梨のデスパイネ野村も登場 ホームランボールを回収し打者に贈る習慣は甲子園で古くから続いていたが、高野連によると、打者の学校名や氏名といった記録を必ず書き込むようになったのは1995年の67回センバツから。この年1月の阪神大震災を受け、選手が「少しでも明るくプレーできるように」と始まった。それまでは大会によって書いたり書かなかったりと統一されていなかったという。 見崎さんが担当するようになったのは、89回センバツ(2017年)からだ。日本高野連の前任の担当者が退任するのに伴い、引き継いだという。自身は岐阜市立岐阜商で1年から右翼手としてレギュラーに。甲子園出場は果たせなかったものの、98年と99年に夏の甲子園で岐阜三田、県立岐阜商の部長としてチームを支えた。05年から8年間、岐阜県高野連の理事長を務め地方大会の運営などに尽力した。 ボールには、対戦投手の情報やどこに打ったか、大会第何号かも記す。スペースが限られているため、使うのは極細の油性ペンだ。硬球は牛革に覆われ、ペン先が傷むこともしばしば。大会期間中は4本のペンを常備している。「選手にとっては一生の財産になる。失敗は許されない」。見崎さんは、そう自分に言い聞かせている。 第2日の第3試合で先頭打者本塁打を放った札幌大谷(北海道)の北本壮一朗選手(3年)は「自分でも出来過ぎと思うくらいの一打」と振り返り、「見る度に、あの瞬間を思い出せそうです」と贈られたボールを手に喜んでいた。 今大会、26日までに5個のボールに書き込んだ見崎さん。「平成最後のホームランボールを渡すのは、どの選手になるかな」。思いを巡らせ、球場に控えている。【加藤佑輔】