蒸気で蒸すこと6時間…! 池袋西口「食彩雲南」で味わった薬膳スープ「汽鍋鶏」の美味なる思い出
現代ビジネス「北京のランダムウォーカー」でお馴染みの中国ウォッチャー・近藤大介が、このたび新著『進撃の「ガチ中華」』を上梓しました。その発売を記念して、2022年10月からマネー現代で連載され、本書に収録された「快食エッセイ」の数々を、再掲載してご紹介します。食文化から民族的考察まで書き連ねた、近藤的激ウマ中華料理店探訪記をお楽しみください。 第12回は、池袋西口「食彩雲南」で味わった朝鮮族料理の「甘辛の魅惑」ーー。 【写真】『進撃のガチ中華』出版記念インタビュー「中華料理の神髄とは何か?」
多様な民族が暮らす広大な地
中国の南西部に位置する日本国より広い雲南省を旅した時に考えた。なぜこの地を「雲南」と呼ぶのだろう? 雲南省には、漢民族の他に、25の少数民族が住んでいる。本当はもっと多様な少数民族が暮らしているらしいが、人口が5000人を切ると、「少数民族」にカウントされなくなる。 省内の山岳地帯を彷徨していると、「未知なる少数民族」が棲息しているのではと思えてくる。「雪男」のような。 それで、なぜに「雲南」なの? 案内してくれた旅行ガイドは、「賓川県に聳える鶏足山(標高3320m)を、古代には『雲山』と呼び、その南側に県城があったからだ」と、もっともらしく教えてくれた。 ところが、省都・昆明の役人に聞くと、「この地に初めて県城を構えた時、北側に見たこともない雲彩が現れたため、これを吉祥として『雲南』と名づけたのだ」と解説するではないか。 さらに地元の学者に聞くと、こう証言した。 「漢の武帝(帝位:紀元前141年~紀元前87年)がある晩、南方に不思議な雲が立ち現れる夢を見た。そこで使者を遣わせ、その夢に見た場所と推定した地域を、『雲南』と呼んで平定したのだ」 一体どれが本当なの? 雲南を歩き続けているうちに、私は「第4の説」に思い至った。 古代から常に戦乱が続いた「中原」(漢民族が統治する中国大陸の中央部)は、まるで「風雲嵐」のようだった。そこで、その「風雲嵐」を忌避できる穏やかな南部の高原地帯を、「雲南」と呼んだのではないか? それでこの地には、土着の少数民族や、「中原」から逃げ延びてきた漢族の人々が、ひっそりと暮らしてきた――。 実際、山一つ越えると、そこにはもう別の少数民族の集落があって、別の言葉を話し、別の格好をした人々が、別の習俗に則って暮らしている。雲南省とは、まるで「25ヵ月分のカレンダー」のような土地柄なのだ。