「地域回復や地域再生にもつながる」伝統的林業・樵木林業復活へ美波町の男性の挑戦【徳島】
循環型の林業「樵木林業」
吉田さんが着目したのは、町で伝統的に行われていた「樵木林業」と呼ばれる循環型の林業です。 「ウバメガシ」などの木はある程度まで成長してから切ると、切り株からまた新しい芽がのびる性質があり、10年ほどで再び切ることができるそうです。 (四国の右下木の会社 吉田基晴代表取締役(52)) 「これ、おそらく2か月ぐらい前に切ったと思いますけど、ウバメガシの特性で、切ると切り株から次の芽が生えてくるんですね。これは『萌芽更新』というんですけど、スギやヒノキは基本的に1回切ると枯れちゃう、だから再植林として次の苗木を植えるけど、こういうカシやウバメガシって、いい切り方してやるとこいつがまた育って、10年後、20年後に切れると。これが樵木林業の特性で、同じ木をずっと若返りさせながら循環林にしていく技術」 「樵木林業」は2018年、日本森林学会が認定する「林業遺産」に登録されました。 しかし、林業をする人が減り伐採をしなくなると、木が大きくなりすぎて病気になりやすくなると吉田さんは話します。
「ナラ枯れ」、そして山は不健康に
(四国の右下木の会社 吉田基晴代表取締役(52)) 「内側が変色してるでしょ?これまさに、ナラ枯れのナラ菌ですね。輪染みの内側がナラ菌が繁殖してて」 「ナラ菌を感染させる虫が『カシノナガキクイムシ』。略して、通称『カシナガ』。それが体につけてるナラ菌が木に繁殖して、木が内側から枯れていくと」 木が成長して直径が10cmを超えると、ナラ菌に感染しやすくなります。 今、徳島の山の多くは伐採が行われず不健康になっていると、吉田さんは危惧しています。 (四国の右下木の会社 吉田基晴代表取締役(52)) 「僕らが切る前って、全部こんな感じですよ。真っ暗でしょ?地面見ていただくと草も生えてないし、全然健康じゃなくて、世代交代が止まっちゃってるので老木が多い」
炭窯での炭づくり
昔、この辺りで炭づくりが盛んに行われていた時の証を見せてくれました。 (四国の右下木の会社 吉田基晴代表取締役(52)) 「これ昔の『炭窯』ですね、戦後とかまでは使ってたんでしょ。昔って重いウバメガシを機械で運ぶことができなかったので、基本的に炭って山の中で焼いて、炭で軽くして運び出す」 吉田さんは町内に新しく4つの炭窯を作り、備長炭を生産しています。 炭を作るためには、まず原木を窯の奥に入れた後、窯の入り口で火を焚いて乾燥させます。 そして、蒸し焼き状態にすると「炭化」が行われ、炭ができます。 (四国の右下木の会社 吉田基晴代表取締役(52)) 「窯出しの瞬間は、見てて美しいので好きです」 吉田さんの窯では、原木を入れてから取り出すまで3週間ほどかかるそうです。 (四国の右下木の会社 製炭責任者 椎名洋光さん) 「一番熱いところで1000℃ぐらい。普通の炭は炭化が終わったら鎮火させて、冷ましてから取り出すのが黒炭、よくバーベキューなどで使われてる炭がそうなんですけど。備長炭は、最後このように温度を一番あげて不純物を取り除いて取り出す、そして鎮火させたものが、やっと備長炭になります」 備長炭は硬いのが特徴で、品質のいいものは叩くと金属のような高い音がします。 (四国の右下木の会社 製炭責任者 椎名洋光さん) 「これはいい炭。これは悪い炭、締まってないんですよ。ナラ枯れ被害木ですね、これはまさに」 備長炭は、高知県や和歌山県などが主な産地で、作るには職人の経験と勘が必要です。 しかし、吉田さんは、それまで大きさや形がバラバラだった窯を一定の大きさに揃えたり、窯の温度をスマートフォンで見られるようにするなど、炭作りを簡単にして作る人や生産量を増やしたいと考えています。 (四国の右下木の会社 吉田基晴代表取締役(52)) 「美波町も徳島もどんどん人口減ってるので、全て人手頼りだったら続かない産業が多すぎると思う。私たちはこの産業をいかに未来、10年後、100年後もと考えると、人頼りだけではなくて、やっぱりいろんなツールを使って持続可能にすることをやらないと」