消費税引き上げはなぜ必要なの?/木暮太一のやさしいニュース解説
外国人投資家が投げ売りすると…
―――「借金ができなくなったら、そこから考えればいいんじゃない?」 それが、そうも行きません。 日本国債は91%強を日本人が持っています。しかし、外国人投資家も8.4%持っています。金額にして82兆円です。 この外国人投資家は、ぼくたち日本人とは違って、あくまでも「投資」と割りきって日本国債を買っている人が多いでしょう。そして、国債が値下がりしそうと思えば、すぐに投げ売りに走るでしょう。 ―――「どうなると、彼らは『値下がりしそう』って思うの?」 大きなポイントは、「日本に貸したお金が返ってこないのでは?」と思うかどうかです。貸したお金が返ってこなくなれば、日本国債を持っていても何の価値もなくなります。もし、外国人投資家にそう思われたら、「紙くずになる前に、一刻でも早く売ってしまえ!」となり、投げ売りされるでしょう。 ―――「といっても、8%程度でしょ? 売られた国債を、また日本人が買えばいいじゃん」 理屈の上ではその通りです。しかし、全体の8%の国債が売りに出されたら、確実に国債の値が下がります。どこまで値が下がるかわかりません。そんな国債を買う人がいるでしょうか? ―――「そっか、投資家や金融機関は困っちゃうんだね」 また、国債の値が下がって困るのは、直接国債を持っている人だけではありません。 日本の金融機関は、既に多額の国債を保有しています。持っている国債の値が下がるということは、その分「含み損」を抱えてしまうということです。となると、たとえば銀行は「これ以上、損を出せない! 少しでも危ない会社には融資するな!」と思うかもしれません。余裕が無い金融機関は潰れてしまうかもしれません。
国債の値段が下がると金利が上がる
また、以前も「アベノミクスで金利上昇なぜ?」という記事で解説しましたが、国債(債券)の値段が下がると、金利が上昇します。 住宅ローン金利、自動車ローン、中小企業が借りる銀行金利・・・ 国債の値段が下がるということは、これらの金利がすべて上がるということです。 消費税増税をやめれば、目先は楽かもしれません。しかし、金利が高騰し、中小企業の資金繰り悪化する可能性も視野にいれると、もっと大変なことになることも十分考えられます。 景気が悪い間に増税をするべきでなない、という主張は正論に聞こえます。 ですが、であればいつこの借金を減らせるでしょうか? 与党には、それを考えながら痛みが伴う改革にも積極的に着手してもらいたいと考えています。 ----- 木暮 太一(こぐれ・たいち) 経済ジャーナリスト、(社)教育コミュニケーション協会代表理事。相手の目線に立った伝え方が、「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・大学などで多くの講演活動を行っている。『今までで一番やさしい経済の教科書』、『カイジ「命より重い!」お金の話』など著書36冊、累計80万部。最新刊は『伝え方の教科書』。