【特集】「地下のどこに"熱い水"?見つけることが難しい…”地熱発電”」この課題に挑む研究者
この日、取りだすことができたのは、目標には届かない20センチほどの岩石。 目標とする60センチのサンプルに向けて、岩を削る時の回転数や岩に刃を押し付ける力の調整など、試行錯誤が続く。
そして1週間後、伊藤教授らのチームが取りだすことができたサンプル。 伊藤教授 「我々が欲しいだいたい60㎝なんですけども、コアがちゃんと取れるようになった」 地下50mから取り出したのは、きれいな円柱状の60センチの岩石。そして、ここに隠れているのが、熱い水がある場所を示すヒント。
伊藤教授 「(地下の)力の状態が分かるので、どの割れ目がずれやすくて流体(熱水)を流しやすいかがわかります」 伊藤教授は、地下から取り出した岩のわずかな〝ふくらみ〟を調べることで、地中にある「岩の割れ目」がどう並んでいるかを推測。 熱い水は、この「割れ目」に溜まる特徴があるため、そこが井戸を掘るポイントとなる。
地中の状態が分からないままに掘っていたこれまでは、熱い水にたどり着く確率が低くなっていたという。 しかし、伊藤教授の方法を使えば成功する確率が上がり、その結果 世界第3位と言われる日本の地熱資源活用につながる可能性があるという。
国は、今 カーボンニュートラルの実現に向けて『地熱発電のポテンシャルをもっと生かしていくことが必要』と位置付けている。 そして2030年には、日本全体の発電量に占める割合をいまの「0.3%」から倍以上にすることを目標とするなか、伊藤教授は事業者の協力を得ながらこの技術を地熱開発に活用していきたいと考えている。
伊藤教授 「成功率を上げられるということで、無駄な穴を掘らなくて済みますから、それによってコストが下がって、地熱開発が促進されるということを期待しています」