<春に挑む・二松学舎大付センバツへ>/下 合宿乗り越え手応え ミーティング重ね、意識統一 /東京
厳しい冷え込みになった1月上旬、千葉県柏市にある二松学舎大付の練習場には、白い息を吐きながらバットを振り込む選手たちの姿があった。「……8、9、10」。10球連続のティーバッティングを100セット、合計1000球を打ち込む。息が切れてスイングが鈍くなると、「それでもやるしかない!」と押切康太郎主将(2年)の声が飛んだ。 チームは毎年12月、10日ほどの強化合宿を実施する。市原勝人監督が就任してから始まったもので、厳しいトレーニングで選手の肉体と気持ちを鍛える冬の伝統行事だ。今年は日程の都合などで1月に開催したが、例年通り、ハードな練習が展開された。 早朝の散歩から始まり、ダッシュやサイドステップを織り交ぜたランニングメニュー、延々と球を打ち込む複数のティーバッティングなどが続く。同じ動作の繰り返しで、気の遠くなるような内容だ。初めて合宿を経験した五十嵐将斗(1年)は「苦しくて何度も練習をやめたいと思ったが、上級生や同級生が声を掛けてくれて頑張れる」と懸命についていった。 朝の散歩では約1・5キロのコースを歩く途中、選手たちが犬を連れた男性に「こんにちは」とあいさつし、市原監督が「しっかりしていますね」と声をかけられる場面もあった。合宿所に戻った後、監督は「こういうことの積み重ねだぞ」と伝えた。生活態度を改めて考えるきっかけにもなった。 合宿を経験し、選手たちは成長を実感している。日笠礼凰(れお)(2年)は「精神的にも大変だが、心は強くなる。合宿で気持ちが成長できた」と語る。片井海斗(1年)は「速い球を打ち返せるようバットを振ってきた。スイングスピードが上がったと思う」と手応えを口にした。厳しい練習を乗り越えることで、選手は自信をつけた。 秋季都大会決勝の悔しい敗戦を経て、野球に対する意識も変わった。練習中や食事前でも積極的にミーティングをし、意見を言い合うようになった。話し合いは1時間を超えることも多い。大矢青葉(2年)は「自分たちの未熟な部分をなくさなければ、技術を上げても勝てない。全員の意識を統一するため、話し合うことが大切だ」と強調する。コミュニケーションを深め、チームの一体感は増していった。 「辛(つら)いは一瞬 悔いは一生」。選手たちが練習に励むグラウンドのスコアボードに掲げられている言葉だ。約20年前、当時の選手が初めて設置し、毎年、練習試合のない冬場に取り付けられるという。チームに代々伝わる言葉にも背中を押され、冬を越えて大きくなった選手たち。目標の全国制覇を果たすため、一丸になってセンバツに挑む。【小林遥】 〔多摩版〕