社説:不登校の最多更新 個々に応じた学びの保障を
増え続ける不登校の要因をつぶさに見つめ、学びの保障と「居場所」づくりを進めたい。 2023年度に全国の小中学校で30日以上欠席した不登校の児童生徒が過去最多の34万6千人となり、11年連続で増加した。前年度から4万7千人増え、40人学級で1・5人に相当する。 京都府は6210人、滋賀県は3991人で、いずれも過去最多だった。 不登校の児童生徒のうち、約4割は学校内外の専門機関につながっていなかった。不登校の長期化で孤立し、学びの機会が失われていく恐れがある。相談体制を強化し、支援につなげなくてはならない。 不登校になった要因を分析するため、文部科学省は今回、質問項目を見直した上で、主観を排して、学校が把握した事実関係を集約したという。 最も多かったのが「やる気が出ない等の相談があった」で約3割、「不安・抑うつの相談」が2割と続いた。 別に、不登校経験者と教師らを対象に昨年行った調査では、「いじめ被害」と回答した割合で子ども側が20ポイント以上、「教職員への反抗・反発」では30ポイント以上も教師側より高かった。 認識のずれは何か。詳しい検証が必要だろう。当事者の声をすくい取る調査、分析をいっそう深めてもらいたい。 文科省は増加の要因として、多様な学びを認める「教育機会確保法」の施行で、無理に通学しなくてもいいとの考えが保護者に浸透したことに加え、特別な配慮が必要な子どもへの支援の不十分さを挙げている。 教員が多忙で子どもに向き合う余裕が減っていることも影響してはいないか。人員体制を含めた再点検が求められよう。 受け皿となる多様な「居場所」の整備も欠かせない。 文科省は空き教室を活用した「校内教育支援センター」や、教育課程を柔軟に編成できる「学びの多様化学校」(不登校特例校)を設置してきたが、センターの設置率は7月現在46%、特例校は京都市などの35校にとどまる。さらなる拡充を急ぎたい。 オンライン授業の充実、民間のフリースクールへの支援も引き続き重要である。 いじめも深刻化している。 小中高などが認知したいじめの件数は過去最多の73万件超となり、身体的被害や長期欠席などが生じた「重大事態」も初めて千件を超えた。 北海道旭川市で中学生が自殺した問題など、学校や教育委員会が当初いじめと判断せず被害が重大化するなど、初期対応が問題となるケースが相次ぐ。京滋でも発覚している。 文科省は今夏、重大事態の調査に関する指針を見直し、学校の初動体制の在り方などを明確化した。組織的な対応の改善につなげたい。