【イマドキの大学ゼミ】公共政策を分析・評価する慶應生 卒業後はコンサル・金融業界などへ
「統計分析」の結果を受け止める
次に各自治体のデータを集め、統計分析ソフトを使って政策の効果を検証していきました。ここで大切なのは「自分の思い込みで評価しない」という点です。 寺井教授は、「もっといい社会にするためにどうすればいいかを考えるには、統計的手法で導かれた事実を、そのまま受け止めることが大事」と言います。藤井さんも「当初は都市交通をスマート化すれば、車の利用が減り、CO₂削減に寄与するという仮説を立てたのですが、実際に分析すると因果関係は見られなくて……。研究の方向を変えざるを得ず、とても苦労しました」と振り返ります。 夏のゼミ合宿での中間発表も、大切な機会です。多くの修正を求められ、それに対応したデータを秋学期に集めます。 2023年の三田祭で、3年生が発表したテーマは「官民連携の水道事業の効率性」「道路投資と利益誘導――東日本大震災が与えた影響」など、インフラ投資に関するものが目立ちました。4年生が卒論で取り上げるテーマはさらに多様で、少子化対策を扱う学生もいれば、一票の格差をテーマにする学生、住宅政策に取り組む学生もいます。 藤井さんは「社会に対する漠然とした問題意識がゼミ活動を通して鮮明になり、理解が深まりました」と話します。課題に対する分析の手法や表現力も鍛えられ、結果として就職活動にも役立ちます。寺井ゼミ生の卒業後の進路は、コンサルやシンクタンク、金融、商社、ディベロッパーなど多岐にわたっています。
ゼミ仲間とともに成長
寺井教授が就活中の学生を見ていていつも感心することは、不採用などのマイナスな経験をしても、人を責めたりねたんだりするより、将来につながる経験として、ポジティブにとらえようとする学生が多いことです。 「自分の行きたかった就職先に他の学生が内定しても、うらやむのでなく、自分もこういう学生になりたい、いいところをまねしようと前向きにとらえます」(寺井教授) 寺井ゼミには、互いの個性を認め合い、自分の得意なことでゼミ活動に貢献しようとする雰囲気が醸成されています。 「僕は専門的な知識がないままゼミに入り、はじめは理解に至らない面もありましたが、発表や討論を重ねるうちに理解が深まっていきました。仲間との交流を通して人間的に成長できるのが、このゼミの最大の魅力だと思います」(藤井さん)