《安倍政権5年》大学力、道徳教科化 「教育再生」で現場はどう変わったか
安倍政権が2012年12月に発足して約5年経ちました。そのときの衆院選は「日本を、取り戻す」を掲げ、公約では「経済」「教育」「外交」「安心」の再生を訴えました。政策によって日本はどのように変化したのか。“再生”はできたのでしょうか。安倍政権5年を検証します。 【図】《安倍政権5年》「いじめ防止法」成立も自殺など重大事態は減らず 今回は、教育再生への取り組みと現場の変化をみていきます。
「世界大学ランキング」で東大が過去最低46位
政権交代した2012年の総選挙で、自民党は「教育再生」を実行すると掲げた。大学が質・量ともにトップレベルとなるよう大学強化を行うことや、道徳教育の充実、土曜授業の実現などで人間力と基礎学力を向上させることなどが盛り込まれていた。安倍首相は政権交代後、教育再生実行会議を設置し、教育再生に取り組んだ。 教育はこの5年でどのように変化したのだろうか。
「大学力」は国力そのもの ── 。2012年の自民党の公約集にはそう書かれている。しかし、2017年現在、大学力が向上した、という実感を持っている人は少ないのではないだろうか。 英タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(Times Higher Education、THE)が発表した、THE世界大学ランキング2018では、東京大学が46位、京都大学が74位で、上位200校に入ったのはこの2校のみだった。 トップ200校に入ったアジアの大学数を比較すると、中国は7校、香港は5校、韓国は4校、シンガポールは2校となる。英語圏ではない、アジアのほかの大学と比較しても日本は見劣りしてしまう。 2013年には、東京大学は27位、京都大学が54位だった。そのほか、東北大学、大阪大学、東京工業大学がトップ200にランクインしていた。2013年に閣議決定された政府の成長戦略では「今後10年間で世界大学ランキングトップ100に、わが国の大学が10校以上入ることを目指す」とされたが、現状、目標達成には程遠い。しかも研究者たちの間では、状況の悪化を懸念する声が根強いのだ。