26人が遺族の講話聴く 犯罪被害者支援条例制定の契機に 鴨川(千葉県)
交通事故や殺人事件で家族を亡くした被害者遺族らによる講演会が19日、鴨川市役所4階大会議室で開かれた。鴨川警察署管内犯罪被害者支援連絡協議会(上村貞雄会長)の会員ら26人が、悲惨な事件、事故の当事者の思いを聞いた。 警察や自治体などが連携して、被害者やその遺族を支援する必要性を発信するとともに、自治体における犯罪被害者を支援する市条例の制定を推し進めようと取り組んでいる同会。同署の町田浩昭署長は前任の県警本部犯罪被害者支援室で、県内の市町村を巡って条例制定を働き掛け、昨年度は県内6市町で同条例が制定されたが、安房地域では整備されていないため講演会を行った。 この日は、平成6年に殺人事件で兄を亡くした弁護士の伊東秀彦さんと、28年に下校中の交通事故で長男を亡くした高田香さんが、当時の状況や受けた支援、現在の活動などについて語った。 伊東さんは、ロサンゼルスで映画製作を学ぶ兄がカージャックに遭い、銃殺された事件を機に法律や犯罪被害者に関わる仕事の重要性を感じ、弁護士になったことなどを振り返り「被害者遺族で弁護士だからできる支援がある。皆さんにもそれぞれの立場でできる支援について考えてもらえたら」と呼び掛けた。 一方の高田さんは、当時小学1年生の長男が青信号の横断歩道を横断中、右折してきた2トントラックにひかれて亡くなった事故について、再現映像などを交えて説明。突然愛する息子を失った心情や講演活動を始めたきっかけなどを振り返り、「立ち直るまで警察や被害者支援都民センター、弁護士などから、精神的にも経済的にもさまざまな支援を受け、支えられてきた」と支援の必要性を訴えた。 現在は、長男が玄関の鏡餅の台に隠していたアサガオの種を見つけたことをきっかけに始めた「交通安全の朝顔」を広げる活動を講演会と併せて継続。「交通事故のような身近な危険は、誰もが加害者にも被害者にもなり得る」「鴨川市でも朝顔を見て、安全運転を意識する人が増え、悲惨な事故を1件でも減らせたら」と交通安全への思いを伝えた。