食べもので振り返る朝ドラ『虎に翼』第3回
田舎まんじゅう 、焼き鳥、キャラメル、チョコレート、寿司、ハヤシライス、団子…ほかにもたくさん!
4月の放送開始から、さまざまな話題を提供して大好評のNHK連続テレビ小説『虎に翼』(月~土 朝8時~)。月刊考察レビュー第3回は、さまざまなかたちで登場した印象的な食べものを通じて、ドラマを愛するライター・釣木文恵が物語を振り返ります。
たくさんの思いが交差した毒まんじゅう
食事シーンが多いのは朝ドラでは通例だが、なかでも『虎に翼』では強い印象を残す食べ物がたくさん登場する。 まず思い浮かぶのは、なんといっても序盤の「田舎まんじゅう」。寅子(伊藤沙莉)が通う明律大学法科の女子部をアピールするため、学園祭で毒まんじゅう事件を題材にとった法廷劇が行われることに。その後、事件に疑問を抱いた寅子の提案で、みんなでいっしょにまんじゅうを作ってみることにする(14話)。寅子の家に集まった仲間たちの検証の結果、まんじゅうに毒を仕込むのは難しいことが判明。やがて、脚本を担当した涼子(桜井ユキ)が、学長によって事実と異なる書き換えが行われていたことを伝える。そしてそのことをしばらく胸に秘めていたのは、 「おまんじゅうを作ってみたかったの。わたくしを特別扱いなさらない皆さんと一緒に」 という理由だったことを告白する。 集まってまんじゅうを作るだけのこのシーン。けれど、涼子のこの告白からは、彼女が日ごろどんな目で見られているかが伝わってくる。また、よね(土居志央梨)は学長の改変を知り「かわいそうな女を弁護する優しき女子部の学生たち」という印象をもたせるために改変した学長に怒る。自分たちが都合よく使われていたことを知る寅子たち。さまざまな事実がむき出しになっていく。 加えて、よねを諭す寅子の母・はる(石田ゆり子)は、娘が「志を同じくする仲間を得られた」と語り、花江(森田望智)は「私はこの輪に入れない」「戦わない女側」だと泣く。それによってさらに梅子(平岩紙)、ヒャンちゃん(ハ・ヨンス)らの弱音まで引き出され、その後寅子が悩みながらも実践していくモットー「思っていることは口に出したほうがいい」が、兄・直道(上川周作)によって放たれるのだ。 しかもこの田舎まんじゅう、その後82話で、涼子と玉(羽瀬川なぎ)が営む喫茶店「ライトハウス」の人気商品として再登場するのがにくい。