松山英樹、あんなに喜ぶ姿あまり見たことがない 世界最強の男との『しびれる戦い』最後は「死ぬほど手が震えて緊張した」【武川玲子コラム】
◇武川玲子コラム「米ゴルフツアー見聞録」 2年に一度、米国選抜と欧州を除く世界選抜が戦う男子ゴルフの団体戦「プレジデンツ・カップ」(9月26~29日)がカナダのモントリオールで開催された。世界選抜は26年ぶりの勝利を目指したが、結果は18・5―11・5と米国選抜が圧勝した。それでも、最終日のシングルス戦で松山英樹がスコッティ・シェフラー(米国)に勝利と一矢報いた一戦は見応えのあるマッチだった。 前夜に行われたペアリングの発表では、世界選抜が第3マッチに松山を挙げると、米国はシェフラーを当ててきた。今季7勝で年間王者、パリ五輪で金メダルを獲得したシェフラーは現在世界最強。約1カ月前、シーズンをポイントランキング9位で終えた松山は「シェフラーを倒していけるゴルフがしたい」と目標を掲げたから、千載一遇のチャンスが早々に巡ってきた。 「やりたい気持ちとやりたくない気持ちと両方だった。ボコボコにされる可能性もあった」と前日まで上がらなかった調子に不安もあったことを勝利後に話したが、当日朝には「もう絶対勝ってやるっていう気持ちでやった」と切り替えていた。引き締まった表情でスタートした松山は「ティーショットがうまく打てた時、いけるかなと思った」と手応え。しかし、グリーンを外したシェフラーがバンカーからカップを直撃してイン。バーディーと先手を取った。 その後の戦いは五分と五分。取って取られてと1アップ以上差が開かない中で「我慢していればチャンスはある」と松山らしい粘りを発揮する。15番パー4で第2打を30センチにつけてバーディー。タイで迎えた17番パー3は1メートルにつけるショットでシェフラーのミスを誘った。1アップで迎えた最終18番、最後は「死ぬほど手が震えて緊張した」という1メートルのパーパットを沈めて勝利、見守っていたチームメートと飛び上がって勝利を喜んだ。 あんなに喜ぶ松山はあまり見たことがない。この勝利が今後のキャリアに生かされるか? と聞かれると「それは分からない」と答えた松山。それでもきっと大きな力になる貴重な勝利だった。(全米ゴルフ記者協会会員)
中日スポーツ