年初来のパフォーマンスは「S&P500」が良かったが、これからはどうなる?
そして、「8資産均等型」はこれら株式や債券、リートに均等に分散投資するファンドだ。8資産とは「国内株式」、「先進国株式」、「新興国株式」に「国内債券」、「先進国債券」、「新興国債券」、そして、「国内リート」と「先進国リート」の8つの資産になっている。年初からのピークは7月11日で株式と同じ。上昇率は13.67%だった。底値は8月5日でピークからの下落率は9.75%だった。株式ファンドと比較するとピークまでの上昇率は半分以下だったものの、下落率は1ケタ台と限定的だった。
このように投資対象資産の違いによって運用成績は異なる。どの資産に投資すれば、より高いリターンが得られ、かつ、下落率を抑えられるかということを常に考えて、市場が上昇に向かう動きの時にはより高いリターンが得られる資産を探し、反対に、市場が下落する局面にあっては、より下落率の小さな資産を選ぶことによって資産価値の目減り小さくする工夫が重要になる。
2024年8月時点の投資環境は、過去10年の中でかなり異なる環境にあると考えられる。2008年の「世界金融危機(リーマンショック)」を経験し、世界の中央銀行は危機からの回復を図って金利をゼロ%水準に引き下げた。その金利を低く据え置いた状態で2020年の「コロナ・ショック」を迎えたため、日欧などは政策金利をマイナス金利にまで引き下げて危機を乗り越えようとしてきた。リーマンショック以降は、歴史的に低い金利の状態が維持されてきた。そのために急速なインフレ(物価高)が起こって、それを是正するために、2022年に欧米の中央銀行は政策金利を大きく引き上げる措置をとった。その結果、米国やドイツなどの先進国の景気が鈍化し始めている。
金利の引き上げによって、加熱していた景気やインフレ率が鈍化し、場合によっては不況になりそうなのが現在の位置だ。景気が鈍化している状況は、企業業績にはマイナスに響き、株式市場にとっては良い投資環境とはいえない。過去10年以上にわたって「米国株式(S&P500)」に投資さえしていれば、高いパフォーマンスが得られたという状況だった。それは、8月末時点までの動きを検証した結果、継続しているが、今後も続くかどうかは断言できない。今後の景気次第では、株式よりも、債券、リートの方が良い成績になるかもしれない。そして、さらに5年、10年という長期を展望した場合、より高く成長する資産は、「S&P500」ではなく、「インド株」かもしれないし、「日本株」かもしれない。決定的なことは誰にもわからない。ただ、不景気になる可能性も考えれば、特定の資産に特化するよりも、投資先を分散することを検討した方が良いだろう。(グラフは、資産別インデックスファンドの年初来の基準価額の推移)
ウエルスアドバイザー