復興拠点となった石巻専修大学、卒業生は4割減 現状を追った
周囲からの期待の大きさは、想像以上
出会えた石巻専修大生は皆、自分がやりたい勉強に励み、将来のビジョンを描けていた。「街では見かけない」「夜遅くまでゲームしている人が多いよ」という周囲には推測で語られていたが、誤解されているのではないかと感じた。そして、石巻グランドホテル後藤宗徳社長は石巻専修大生に大きな期待を寄せていた。 後藤社長は、石巻専修大学の設立にも携わり、自身の経営するホテルで卒業生を雇用している。 「素直な子が多い一方で、尖った魅力を発揮できていないのが課題」と分析する。「経営者としては、若者に自分は何をやりたい。どう生きたい、という強い意志を持っていてほしいと思っている。素直なだけだと言われたことをこなすが、言われたこと以外のことをしない。失敗を恐れずチャレンジする精神をはぐくんでほしい」と話す。 大学を誘致した背景には、大学進学や社会人になるタイミングで首都圏に出ていくと、なかなか地元に戻ってこないため、地方の少子高齢化の歯止めにしたいという想いもあった。「地元に大学があるのは、東京に行かなくても最高学府として与えられるので、地元の人は期待している」と説明する。 「大学は偏差値でランク付けされる傾向があるが、それが全てではない。高卒でも人生で成功している人はいる。大学は単なる一つの要素。自分たちの可能性は無限なんだ、と都心の著名な大学に負けないくらいキラッと光り輝くものをつくってほしい」とエールを送る。
課題は学生と地域住民の接点づくり
今回の取材で、学生と地域が乖離しつつあるのではないかと感じた。自分なりの目標を持っているが、それを実現するための情報は簡単に手に入る範囲でしか得ようとしない学生と、学生に対して大きな期待を抱いているのにも関わらずそれを伝えられていない地域住民。近くで生活しているのにも関わらず接点が上手くつくれていないのではないか。 同校の進路支援課の尾崎課長によると、「地元志向が強まるにつれて、復興の力になりたいと思う学生が増えている。企業側も自社が力を入れている取り組みとして、地域復興を挙げることが多い。今後は同じ想いを持つ学生と企業が上手くマッチングするように、大学側も企業と連携していきたい」と話す。 更に今後は学生数の回復を目指して、奨学金制度も整えるという。今後の石巻専修大学の躍進に期待だ。 (この記事はジャーナリストキャンプ2016石巻の作品です。執筆:鈴木彩華)
鈴木彩華