高校公民科の新科目「公共」、先生たちはどんな授業をすればよい?
藤井 剛(明治大学 文学部 特任教授) 文部科学省が定める学習指導要領はおよそ10年に1度改定されます。最新の高等学校学習指導要領(2018年告示)は、2022年度から段階的に実施が始まっています。各教科が大きく再編されるなか、公民科では「現代社会」にかわって「公共」という科目が新設されました。その狙いを解読し、先生たちはどんな授業をしたらよいかを考えます。
◇生徒の日常的な「問い」を考える「公共」の授業 高等学校で2022年度から段階的に実施されている今次の学習指導要領において、公民科では新科目である「公共」が必修となりました。それにともない、これまでの「現代社会」は廃止され、「倫理」と「政治・経済」は選択科目となりました。1982年に「現代社会」が必修科目として登場して以来の大きな変更です。 高等学校で2022年度から段階的に実施されている今次の学習指導要領において、公民科では新科目である「公共」が必修となりました。それにともない、これまでの「現代社会」は廃止され、「倫理」と「政治・経済」は選択科目となりました。1982年に「現代社会」が必修科目として登場して以来の大きな変更です。 「公共」は原則として1年生か2年生で履修することになっています。ご存じのように、公職選挙法改正で選挙権が18歳に引き下げられましたので、この「公共」の授業を通して18歳になる前に主権者としての意識を持ってもらおうとしているのです。つまり新科目「公共」は、主権者教育の「一丁目一番地」として位置ずけられているのです。 では、「公共」の授業を具体的に見てみましょう。 たとえば、ある出版社の「公共」の教科書を開いてみると、〈「国」を新しくつくり独立できるか?〉〈都会で働くか、田舎で働くか?〉〈小学校・中学校に給食は必要か?〉などの見出しが目に飛び込んできます。これまで公民科で扱ってきた「主権国家」「地方自治」「職業選択」「過疎・過密」「社会保障」などのテーマが、日常的な「問い」として示されているのです。 皆さんが受けた公民科の授業は、「教科書の太字の語句を覚える暗記科目」「テスト前の一夜漬けで乗り切る科目」というイメージでしょうから、かなり驚かれるような教科書ではないでしょうか。 実は、この「問い」をもとに考えて生徒が主体的に活動するというコンセプトは、新しい学習指導要領全体、つまりすべての教科に貫かれています。 また新しい学習指導要領では、これまで重視されてきた「知識の獲得」から、「その知識を使って、『何ができるようになるか』を明確化した授業」を行うこと、さらにこれまでの「座学中心の授業」から、いわゆる「アクティブ・ラーニング」を取り入れた授業への変更が求められています。 ですから新科目「公共」においても、「三権分立」や「自由主義」などの単語を暗記するのではなく、その知識を使って生徒たちが日常的に疑問に思っていることを解決するような授業が求められているのです。 このようにこれからの授業では、先生たちは単語を黒板に書いて一方的に説明して終わる「チョーク&トーク型の授業」ではなく、生徒と一緒に「問い」を立て、生徒が調べたり考えたりする手助けを担うことになるのです。