広瀬香美VRライブなどユニークな展示は要チェック 『Vket 2023 Winter』企業会場レポート
12月2日からスタートした、HIKKY社による世界最大のVRイベント『バーチャルマーケット2023 Winter』。企業出展・一般出展ともに、12月17日までの会期中までに全てをめぐるのはなかなかにハードなのではと思わされるほどに充実した内容となっている。 【画像】傘からビームを撃つ筆者 ほか会場画像多数(全50枚) とはいえ、まだまだソーシャルVR/メタバース文化は黎明期。「名前を聞いたことはあるが、実際に足を運んだことはない」という方も多いだろう。そこで本記事では、『バーチャルマーケット2023 Winter(以下、Vket 2023 Winter)』の中でも会期中限定となる企業出展会場(ワールド)について、メディア向け先行体験会の様子も織り交ぜながら紹介していく。 ■ポップな雰囲気で写真映え抜群な「パラリアル渋谷・原宿」 企業出展会場のひとつ「パラリアル渋谷・原宿」。12月16日から17日にかけて開催予定のリアルイベント『バーチャルマーケット2023リアルinシブハラ(以下、Vket 2023 Real)』の開催地となる、渋谷・原宿エリアがモチーフとなっている。 スタート地点・原宿駅前からまっすぐ伸びる「Kawaii Street」は、パステルピンクを基調にした「ゆめかわ」なテイスト。リアルVketの会場も軒を連ねるなか、やけに街並みに溶け込んだロート製薬ブースなど、出展企業が早速登場する。 バーチャルな展示会において、主だった出展物は3Dモデルと“体験型のコンテンツ”だ。「Kawaii Street」では、ロート製薬ブースではリップクリーム作り、老舗傘メーカーのAURORAでは「遊べる傘のガチャ」が体験できる。手で触れて楽しめるコンテンツは、どの回のVketでも話題になる傾向が強い。 最多7回目の出展となるBEAMSも、アバター向け衣装の展示と、ランウェイを歩くコンテンツの二段構えだ。衣装展示にいたっては、その場で現在のアバターに試着できるようになっている。毎年話題となるが、購入前の大まかなチェックができる、現実のショッピングに近い体験だ。 BEAMSブース、ランウェイコンテンツ。アバターが自動でランウェイ映えする動きをしてくれる そのまま、順路は古着屋が立ち並ぶ「裏原宿」から、「渋谷」エリアへと続いていく。原宿から渋谷まではシームレスに連なっており、現実の原宿と渋谷の距離感をすこしばかり体験できるつくりだ。 道中には東京地下鉄株式会社による銀座線の再現コンテンツも。内側には人気アバターの『水瀬』『あのん』が乗車している。ユーザーの心をつかむ手堅い演出だ。 「渋谷」エリアは高架下を抜けて、109前を彷彿とさせる区画に出る。過去の開催時に登場した「パラリアル渋谷」は渋谷駅前がメインで、一部重複する区画こそあるが、導線や空間全体の雰囲気の違いもあり、見え方はかなり異なる。 終点地点にもランウェイを歩くコンテンツがある。フォトスポットの多さも相まって、現実の原宿や渋谷と同様に、自らのアバター・ファッションにこだわる人ほど楽しめる会場だ。 ■魔法の杖を手に歩く「パラリアルロンドン」 企業出展会場「パラリアルロンドン」は、ロンドンの代名詞である地下鉄ホームからスタートする。とはいえ、地下鉄に乗って移動するわけではない。会場への入口は「魔法のゲート」だ。 テーマは「魔法都市」。入口で手に入る杖を片手に、様々な魔法ギミックを動かしながら会場をめぐることができる。さながら気分は「ハリー・ポッター」だろうか。 宮殿から時計塔までをゆく順路は比較的シンプルで、道幅も大きいため迷うことは少ないだろう。敷地も広大で、その分展示ブースも派手で大きなものが多い印象だ。 ユニバーサルエンターテインメントは天守閣つきの城を建造していた。『バジリスク~甲賀忍法帖~』をモチーフに掲げたこのブースでは、現実の遊技機を模したゲームが楽しめる。 ユーザーの注目が特に大きいのはシャープだろうか。軽量・小型の新型VRヘッドセットを引っ提げて、今回が初出展となる。 デバイスの3Dモデル展示もさることながら、「桔梗」「あのん」「碼希」「マヌカ」と人気アバター4体を用いた「ユースケース展示」は興味深い。アニメーションつきで動く使用用途は、「VRゲーム」や「映像鑑賞」はもちろん、「仕事」から果ては「寝そべってもOK」と、ユーザー需要を理解している印象だ。 また「アフロ完全対応」なる文言も含めて、全体的にノリノリである。HIKKY広報担当の育良氏によれば、「バーチャルマーケットならばはっちゃけられる」と語る企業担当者も多いのだとか。ユーザーだけでなく、企業側にとっても、新たな体験が得られ、挑戦しやすい場なのだろう。 Robot Consultingは「バーチャル裁判所」を開いた。「勝訴」の紙を掲げる“勝訴ダッシュ”の体験ができるほか、音声対話ができる「ロボット弁護士」が最大の目玉だ。 こちらの発話を認識し、(多少のラグはあるが)流暢な日本語で応答する「ロボット弁護士」は、「メタバースにおけるAI活用」の最もわかりやすい活用例として体験しておくとよいだろう。なお、対応できるのは「メタバース上の法律」に関する簡潔な相談までなので、そこは注意が必要だ。実際の法律相談に関しては弁護士を始めとする有資格者へ問い合わせよう。 ギミックが作動する箇所はなかなか多く、広範囲に広がっているので同ワールドの体験では自然と杖を片手にロンドンの街を歩き回ることになるだろう。全てのギミックを動かせば最後になにかが待つかもしれない……ので、くまなく探索してみるのがオススメだ。 ■海の中に広がる「パラリアル沖縄」 3つ目の企業出展会場は「パラリアル沖縄」。その名の通り、沖縄をモチーフにした南国風のワールドだ。入口近くにいるマンタを助けて、背に乗ると……なんと海中に降り立つ。色鮮やかな魚たちが泳ぐ中、沖縄らしい看板が並ぶ街並みにたどりつく。ここは「海の中に広がる沖縄」という趣向の会場とのことだ。 街を通り過ぎたところには鍾乳洞・玉泉洞があり、さらに奥には水牛の牛車の姿も。先行体験会でも、沖縄在住の参加者が「これ、ホントに交通手段としても使われてるんですよ!」と反応を示すなど、沖縄らしいポイントはうまい具合に押さえているようだ。 とはいえ、全体が“沖縄一色”というわけでもない。静岡県熱海市や愛知県豊田市など、地方自治体の出展はこちらに固まっているので、各地の特産品や名物を楽しむことも可能だ。たとえば豊田市は初出展で、ドローンや「空飛ぶクルマ」といったテクノロジーを前面に押し出している。 一方、4回連続出展の熱海市は、どこかで見たような『海鮮丼タワーバトル』がブースをにぎわせる。常連ほどノリノリになり、変わった出展内容となっていくのは『バーチャルマーケット』でよく見られる光景だ。 先行体験会でとりわけ評判が良かったのは、筆記用具メーカー・パイロットのブースだ。前回はボールペンを「かっこいいボート」に見立てた対戦ゲームを用意したが、今回はボールペンをきちんと筆記用具として使用する「お絵かきコーナー」が設けられている。 とはいえ、ただ描くだけではない。キャンバスに描いた絵が、『ラクガキ王国』のように目の前で動きだすのだ。用意されたお手本をなぞってもいいし、なぞらなくてもしっかり動いてくれる。自由な発想を受け止める、インタラクティブなお絵かきコンテンツとなっている。ぜひ体験してみてほしい。 順路の最後は、さながら竜宮城のように首里城が待ち構えている。数年前に焼失してしまった正殿が、ここでは在りし日の姿で存在している。 またこの首里城には、HIKKYと協業関係にあるあしびカンパニー主催のイベント『OKIVFES 2023』のタイアップコーナーが設けられている。『バーチャルマーケット2023 Winter』と入れ替わるように、12月15日から12月24日まで開催される、沖縄にフォーカスしたバーチャルイベントだ。『Vket』の沖縄から、元祖・沖縄メタバースである『バーチャル沖縄』へ、バトンを渡すようにバーチャルイベントが続くのが、今年の12月である。 ■パワフルな広瀬香美のバーチャルライブは必見 各会場のほかにも、『Vket 2023 Winter』では企業による特設コンテンツを楽しむこともできる。特に今回もっとも注目すべきは『JVCKENWOOD Kohmi Hirose VR LIVE』。「バーチャル広瀬香美」によるバーチャルライブが観覧できる、JVCケンウッドの出展コンテンツだ。 バーチャルライブは毎日10分おきに特設ワールドにて再生される。短い時間間隔でたくさん開催してくれるため、友人と連れ立って見に行きやすいのはありがたい。 ステージにはアバター姿のバーチャル広瀬香美が立つ。過去何度か『Vket』に登場した「バーチャル広瀬香美」だが、これまでは市販アバター『まりえる』を改変したモデルを使用していた。今回はそれが一新され、完全なワンオフモデルで登場、顔つきも広瀬香美本人にかなり似せている。 ライブはアリーナのステージから始まると、足場がパレードのように大通りを移動したり、空へ向かって上昇したりと、ダイナミックにシーンが展開する。歌うのはおなじみ「ロマンスの神様」。歌唱とモーションは今回のために収録されたとりおろしで、それはもう元気よく動き回る。その姿はまぎれもなく広瀬香美その人だ。 ただでさえパワフルなアーティストが、演出の派手さも相まって、力強いパフォーマンスを披露してくれる。バーチャルライブは1曲とは思えないほどの満足感があるので、ぜひ観覧してみてほしい。 ■各社が趣向を凝らす企業展示はもちろん、ユーザーの出展ブースも必見 このほかにも、JRAによる「バーチャル中山競馬場」がクリスマス仕様にアップデートされていたり、埼玉と群馬で展開するスーパーマーケット「ベルク」の公式ワールドには、タイムアタックにも挑戦できるレースゲームが登場したりと、各社がさまざまな趣向を凝らしている。 それぞれユニークなアイデアでもってバーチャルならではの体験を提供しようと努力しているのがよくわかるのも、『Vket』のおもしろいところだ。たとえば、「スーパーマーケットのカートに乗り込んでレースをする」という現実ではできない体験を積極的に提供するのが、『バーチャルマーケット』における「ベルク」のモットーだ。なお、「ベルク」の公式ワールドには過去の『バーチャルマーケット』出展コンテンツも設置されているので、これらで遊んでみるのもよいだろう。 そして、『Vket 2023 Winter』の主役は企業出展だけではない。13種・21会場という大ボリュームで展開される、一般出展会場も主役のひとつだ。クリエイターやコミュニティの多種多様な展示にくわえて、会場そのものも趣向を凝らしたものが多く、これらもぜひ見てほしいところだ。 『Vket 2023 Winter』は、12月2日から12月17日まで開催予定だ。しかし、およそ2週間ほどの期間があっても、全てのブースをめぐるのはなかなかに大変だろう。まずは会期中限定になることが多い企業出展会場から足を運び、そこから一般出展会場を可能な限りめぐってみることをオススメする。
浅田カズラ