北陸新幹線の新ステージ、延伸開業で期待される効果
首都圏との交流人口増加や経済活性化を見込む福井県は「100年に一度」と表現するチャンスを最大化できるのかが問われる。県はJR福井駅前に実物大の「ティラノサウルス」ロボットを新設。化石発掘が多い「恐竜王国」を前面に打ち出し、誘客に熱が入る。 観光地が県内に点在する課題に対し、バスやタクシーなどの地域交通の利便性向上の取り組みが進む。カーシェア事業を昨秋始めたコインパーキング管理運営の日本システムバンク(福井市)の野坂信嘉社長は「多くの会社で協力し対応しないといけない」と話す。 同県は宇宙関連の産業振興にも熱心で、「宇宙業界はベンチャー含めて関東に多い。連携しやすくなる」(繊維大手幹部)と歓迎。ある機械大手幹部は「関東への出張や関東からの来社アクセスが良くなる」と期待する。 一方、直通特急がなくなり、乗り換えの手間が増える関西・中京圏との往来で懸念の声も。臨海部の工業団地も走るタクシー運転手は「喜んでばかりはいられない。関西企業からは不便になり福井から離れないか心配」と一抹の不安を吐露する。 今回の北陸新幹線の延伸開業で石川県内では新たに「小松駅」「加賀温泉駅」が誕生する。新ダイヤはこれら二つの駅の特性に配慮して設定した。最速の「かがやき」は、小松駅でビジネス利用が多く見込まれるため、朝晩にそれぞれ1往復が停車し、通勤や出張での利便性を高めた。一方、主に観光客の利用を見込む加賀温泉駅は発着を日中に集中させた。石川県は県内全線開業を「第二の開業」と捉え、既存の金沢駅を含め交流人口の増大に期待する。 ただ、しばらくはイレギュラーな状況が続く。能登半島地震の発生で観光客が激減した宿泊施設は予約が戻りつつあるものの、現在は被災者の2次避難所としての役割も果たしている。加賀温泉の旅館協働組合などで構成する「加賀温泉郷協議会」は避難者と観光客の双方の受け入れは可能と判断し、延伸後も避難者の受け入れを続ける方針を表明した。 当面は被災者支援を継続しながら、観光需要を喚起し受け入れていくという難しい舵取りを迫られる。