ヴォルゴグラード連続爆発 ソチ・オリンピック直前に浮上したテロの脅威
ロシア南部の都市ヴォルゴグラードで29日、自爆テロとみられる爆発が発生しました。市の中心部にある鉄道駅で発生した爆発で、少なくとも17人が死亡し、約50人が負傷しています。30日には駅から約2キロ離れたゼルジンスキー地区で、トローリーバスが爆発。これまでに10人の死亡が確認されています。ヴォルゴグラードでは10月にも運行中のバスを狙った自爆テロがあり、30人以上の死傷者を出しました。27日にもロシア南部の別の町で車に仕掛けられた爆弾によって3人が死亡しています。どんな背景があるのでしょうか?
「ブラック・ウィドー」と呼ばれる未亡人によるテロか
29日に鉄道駅で発生したテロでは、ヴォルゴグラードから遠く離れたシベリア西部の町チュメニ出身の26歳の女性が実行犯だったとロシア国内の複数のメディアが伝えており、他に2人の共犯者がいたと報じるメディアもあります。ロシアからの報道を整理すると、この女性は正午過ぎに駅に入り、列車が到着するホームの方へ歩き出しました。駅構内に金属探知機付きのゲートが設置され、その周辺に警察官らが配置されていたため、ゲートの手前で自爆した模様です。 10月にバスが爆破された事件でも、実行犯は女性でした。29日の事件の実行犯とされる女性との共通点はまだあり、2人とも北コーカサス地方の分離独立運動で夫を亡くした未亡人で、ロシアに対して強い恨みを抱いていたと伝えられています。北コーカサス地方には「ブラック・ウィドー(黒い未亡人)」と呼ばれる女性だけのテロ組織があると報じられており、チェチェン紛争などで夫を失った女性が志願して自爆テロを決行したとされるケースは過去にいくつか存在します。モスクワ近郊のドモジェドボ国際空港(2011年)やモスクワの地下鉄(2010年)での自爆テロでは、実行犯は女性でした。
ロシアを悩ませてきた北コーカサス地方とは?
黒海とカスピ海に挟まれた北コーカサス地方は、昔から様々な民族が入り混じる場所でしたが、イスラム世界とアジア、それにヨーロッパが交差する場所であったため、常に大国の思惑に翻弄されてきたのです。 ソ連崩壊後に、南コーカサス地方ではグルジアやアルメニア、アゼルバイジャンが独立を果たしました。しかし、チェチェン人やダゲスタン人が多く住む北コーカサス地方の独立をロシアは決して認めませんでした。チェチェンを例にとっても、ロシア連邦からの分離・独立を巡ってチェチェン人同士で対立し、イスラム原理主義に基づいた新しい国家を作るべきだと主張するグループも存在します。チェチェン紛争後もロシアの介入は続き、数万人のチェチェン人が「行方不明」になったという報告もあり、ロシア当局の人権侵害も問題視されています。