「第37回東京国際映画祭」の注目ポイントは?新設部門の注目作、サーチライト30周年記念など特集上映をチェック
今年は10月28日(月)から11月6日(水)にかけて、日比谷・有楽町・銀座エリアで開催される第37回東京国際映画祭(TIFF)。昨年に引き続き、多くの海外ゲストの来日が予定されている今年のTIFFでは、毎年恒例の企画はもちろんのこと、新設部門や今年だけの特別企画も催されるなど注目ポイントが目白押し!そこで本稿では、新設された「ウィメンズ・エンパワーメント部門」を中心に、今年の見どころとなる特集企画を紹介していこう。 【写真を見る】“女性の活躍”にフォーカスした新設部門で、『劇場版ドクターX』がワールドプレミア上映! ■“女性の活躍”に焦点を当てた新設部門が誕生! これまで「コンペティション」や「アジアの未来」「ガラ・セレクション」など、主要9部門で構成されていたTIFF。今年から新たに、「ウィメンズ・エンパワーメント」部門が創設された。 その名称からもわかる通り、同部門がフォーカスするのは女性監督の作品や女性の活躍をテーマとした作品。2021年に映画界での男女平等を推進する国際団体「Collectif 50/50」にアジアの映画祭として初めて署名したTIFFが、映画界の未来に向けた一歩を踏みだすきっかけとなることが期待されている。 第34回のTIFFで「Amazon Prime Video テイクワン賞」の審査委員を務めたアンドリヤナ・ツヴェトコビッチがシニア・プログラマーを務める同部門では、日本をはじめ、イランやトルコ、ドイツ、コスタリカ、香港から計9本の新作映画がラインナップ。注目は2012年にテレビ朝日系列で放送がスタートし、高視聴率を記録し続けてきた「ドクターX ~外科医・大門未知子~」の初の映画作品となる『劇場版ドクターX』(12月6日公開)。今回のTIFFが世界初お披露目の場に選ばれた。 また、11月4日(月)には、女性映画陣の躍進を支え続けた故・高野悦子氏がジェネラル・プロデューサーを務めた東京国際女性映画祭の功績を振り返りながら、若手からベテランの女性監督たちが語り合うシンポジウム「女性監督は歩き続ける」と、東京国際女性映画祭の15回目を記念して製作されたドキュメンタリー『映画をつくる女性たち』の上映も行われる。 ■あの傑作、名作をスクリーンで観るチャンス! 1994年に設立されて以来、『スラムドッグ$ミリオネア』(08)を皮切りに『それでも夜は明ける』(13)、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(14)、『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)、『ノマドランド』(20)と5度にわたってアカデミー賞作品賞を受賞するなど、数多の傑作を世に送りだしてきたサーチライト・ピクチャーズ。その30周年を記念した特集上映も行われる。 ラインナップされている6作品は、サーチライトを象徴する人気作や映画ファンから支持を集めた傑作ぞろい。第79回アカデミー賞で脚本賞と助演男優賞に輝き、いまなお愛されるロードムービー『リトル・ミス・サンシャイン』(06)から、ユニークな構成と語り口で公開当時に映画ファンを熱狂させた『(500)日のサマー』(09)、さらにギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』やウェス・アンダーソン監督の『グランド・ブダペスト・ホテル』(13)と『犬ヶ島』(18)、タイカ・ワイティティ監督の『ジョジョ・ラビット』(19)。 DVDや配信サービスなどで手軽に観ることができる反面、なかなか劇場で観る機会がない近年の名作たち。リアルタイムで劇場鑑賞している人も、いつか観ようと思っていた人も、この機会にスクリーンで味わってみてはいかがだろうか。 ■入江悠監督の5作品を上映!日本映画を代表する傑作の4Kリマスターも この1年間の日本映画を対象に“特に海外に紹介されるべき日本映画”という観点から選考された作品を上映する「Nippon Cinema Now」部門。毎年、映画監督や俳優にフォーカスした特集上映が行われている同部門で、今年特集が組まれるのは入江悠監督。 自主制作映画『SR サイタマノラッパー』(08)で一躍脚光を浴び、大作の商業映画から良質なインディペンデント作品までジャンルの垣根を超えて次々と野心的な作品を生みだしてきた入江監督。その作品群から、「SR サイタマノラッパー」シリーズと『太陽』(16)、そして今年公開され大きな話題を集めた『あんのこと』(24)の5作品が上映される。 また、一昨年の第35回から復活した黒澤明賞にあわせて企画されてきた特集上映「黒澤明の愛した映画」では、チャールズ・チャップリンの『独裁者』(40)とジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』(59)、アンドレイ・タルコフスキー監督の『ノスタルジア』(84)、ホウ・シャオシェン監督の『童年往事 時の流れ』(85)の4作品に加え、黒澤監督の代表作である『七人の侍』(54)の4Kデジタルリマスター版がジャパンプレミア上映。 さらに毎年恒例となった、東京ミッドタウン日比谷の日比谷ステップ広場で行われる無料の屋外上映会では、世界的アクションシリーズとなった「ミッション:インポッシブル」シリーズと「ワイルド・スピード」シリーズの記念すべき第1作と昨年公開された最新作がそれぞれ上映。シリーズの進化を目の当たりにすることができよう。そして「アニメーション」部門で50周年を記念して『「宇宙戦艦ヤマト 劇場版」4Kリマスター』(77)が上映されるのにあわせ、新旧4作品の「宇宙戦艦ヤマト」作品の屋外上映も企画されている。 上映ラインナップや詳しいスケジュール、チケット情報などは映画祭公式ホームページをチェック。また、TIFFの開催期間と重なる10月25日(金)から11月10日(日)には、XかInstagramに所定のハッシュタグをつけて投稿すると、抽選で映画グッズが当たる「Tokyo Cinema Days ~Tokyoで映画を愉しむ2週間~」と題したキャンペーンも展開。世界中の映画が一堂に会するTIFFで、思いっきり映画を楽しもう! 文/久保田 和馬