<独自>瀬戸大橋での送電線復旧作業、紀伊水道の送電線に影響か 四国の大規模停電
四国4県で9日夜に発生した大規模な停電で、送電線のトラブルが引き金になった可能性があることが11日、分かった。瀬戸大橋を通って本州と四国で電力を融通する送電線の復旧作業が、紀伊水道の海底ケーブルでつなぐ別の送電線に何らかの影響を及ぼした結果、この送電線の本州への送電量が急増して電力の需給バランスが崩れ、停電につながったとみられる。 【写真】切断した架線に熱が加わった形跡 瀬戸大橋上の列車立ち往生 四国電力送配電によると、停電は最大計約36万5300戸に上ったが、約1時間半後にはほぼ全戸で復旧。およその内訳は香川6万2500戸、愛媛11万1900戸、徳島11万1400戸、高知7万9500戸だった。 武藤容治経済産業相は11日、同社に対し、停電の原因究明と再発防止策の検討を指示したと明らかにした。 電力需給の調整は電力広域的運営推進機関が状況を常時監視し、必要な場合は各送配電会社に相互の電力融通を指示している。その際は連系線が重要な役割を果たす。 四国電力管内では岡山県と香川県を結ぶ瀬戸大橋を使った「本四連系線」の2つのラインと、徳島県と和歌山県を結ぶ「阿南紀北直流幹線」の2つのラインの計4ラインを使って本州と電力を融通し、四国エリアの電力の安定供給を維持している。このうち、阿南紀北直流幹線の1ラインは令和6~7年度に装置の更新工事を行うため停止している。 四国電力送配電や関係者によると、9日午後2時20分ごろ、本四連系線の1本でトラブルが発生した。点検作業のため停止していたもう1本を復旧させようとしたところ、何らかの原因で阿南紀北直流幹線の本州向きの電力量が急増。四国の電力が不足する状態となり、需給バランスを保つため自動的に供給を停止させる装置「周波数低下リレー」が稼働し、停電を引き起こした。 電力の需給バランスが崩れると周波数が乱れ、同じ送電網にある他の発電設備も停止してしまう。連鎖的に広域で停電する「ブラックアウト」に発展する恐れがあるため、供給力が急減した場合は限定的な範囲で停電を行って需要を抑える。 9日午後2時半ごろは関西で電力需給が逼迫(ひっぱく)する状況はなかった。四国送配電によると、この装置が作動したのは四国電力管内では記録が残る昭和41年以降で初めて。
ブラックアウトは日本では平成30年9月、北海道で初めて発生。北海道胆振(いぶり)東部地震のため苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所が停止した影響で他の発電所も停止し、電力の需給バランスを保てなくなり、道内のほぼ全域が停電した。(井上浩平)