ほとんどの人が老後を「大失敗」するのにはハッキリした原因があった…実は誤解されている「お金よりも大事なもの」
目的を見失ってはいけない
私はこの言葉を、「ジャン・クリストフのような生き方を一代で終わらせるのではなく、この本を読んだ若者たち、そのまた次の世代へと引き継いでいってほしい。それにより、クリストフは死んでも彼の信念(すなわち作者の信念)は永遠に生き続ける」という、ロランから次世代へのメッセージだととらえています。このように自分の信念を次世代に伝えることも、シニア世代の重要な役目だと思うのです。 私自身の信念は、「世界の自由と平和」です。中国大使時代(七一~七三歳の頃)の私は、この信念に基づいて日中友好関係の維持に努めました。当時の石原慎太郎東京都知事が尖閣諸島の購入計画を発表したときには、英紙のインタビューに「計画が実行されれば、日中関係にきわめて深刻な危機をもたらす」と答え、日本中から「媚中派」と批判を浴びましたが、自分の信念を曲げる気は少しもありませんでした。 世界の自由と平和は誰もが望むことですが、実現がこれほど難しいものはありません。アメリカが強いからアメリカにつく、中国が経済的に繁栄すると中国のほうを向く、ロシアがウクライナに侵攻して強そうだと判断すると西側は皆でロシアを叩く、ということでは、永遠に世界平和は実現しない気がします。 大事なのは、日本がどの国に味方するかではなく、大国が喧嘩をしそうになったら日本が国として仲介の労をとり、世界が「自由と平和」の方向へ向かうために努力するよう考えることだと思います。 この信念を若い人たちに伝え、自分が死んだあとも次の世代へとつないでいってもらい、我々の世代が頑張っても為し得ていないことを実現してほしいと願っています。 皆さんにも自分なりの信念があるはずです。それは、若い頃からの読書や勉強や経験から得た、学びや気付きの蓄積です。六〇歳を迎えた頃には確固たるものになっているはずなので、その信念に基づいてものごとを判断し、行動し、次の世代へ伝えてください。 子や孫に財産を残すのも大事かもしれませんが、お金やモノには代えられない信念という財産を残すことは、それ以上に大切なことだと思います。 さらに連載記事〈定年後、「絶望の30年」を過ごす人と「幸せな30年」を過ごす人の分かれ道はここにあった…3000万人の人たちが誤解している「お金の使い方」〉では、老後の生活を成功させるための秘訣を紹介しています。
丹羽宇一郎
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