高齢の親と同居しています。介護にあたり「世帯分離」はしたほうがいいのでしょうか?
高齢者と同居している、または同居して親を家族で介護している家庭は多いと思われます。世帯分離とは、親と同居している状態で、世帯を「親の世帯」と「子どもの世帯」の2つに分けることです。 同じ家、同じ住所に住んでいても、住民票の世帯分離をすることは認められています。 世帯分離をすることで、介護費用を削減できる場合がありますが、これはどのような仕組みで、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
なぜ世帯を分けるとよいのか
世帯分離の最大のメリットは、介護保険サービスの負担額を軽減できることです。介護保険サービスは、世帯や本人の所得に基づいて自己負担額の上限を決めます。そのため現役世帯である子どもと世帯を分けて、親の世帯収入を少なくすれば、自己負担額を減らすことができます。
世帯分離の負担軽減効果
1ヶ月の介護保険の負担によって決まる「高額介護サービス費」の自己負担上限額は、「世帯の所得で決まる場合」と「本人の所得で決まる場合」の2つのパターンがあります。 例えば、介護サービスを受けている母親(住民税非課税)が、住民税の課税される子どもと同じ世帯に住んでいた場合、高額介護サービス費の負担上限額は月額4万4400円(子どもが「住民税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満」を稼ぐ場合)になります。 しかし、世帯分離をして母親だけの世帯となった場合、「世帯全員が住民税非課税」という区分にあてはまるので、高額介護サービス費の負担の上限額は図表1のように月額2万4600円となります。
厚生労働省「令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」より筆者作成 さらに、この母親の前年の年金収入とその他の合計所得金額合計が80万円以下であるとすると、負担の上限額は月1万5000円になります。同じ介護サービスを受けても、世帯分離を行うと負担を月当たり約2万~3万円、年間では約24万~35万円減らせます。 なお、「課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1160万円)未満」の場合は、世帯分離をすることで自己負担の上限額は月に約7万~8万円、年間では約82万~94万円削減できます。 同様に「課税所得690万円(年収約1160万円)以上」の場合は、負担額を月に約12万~13万円、年間では約139万~150万円減らすことができます(ともに図表2参照)。高所得者の人こそ、世帯分離を検討してみてもよいでしょう。