シンガーソングライター・ギタリスト Reiの「捨てられない衣装ものがたり」
自身の音楽を象徴するようなファッションアイテムを4人のアーティストに持ってきてもらった。大切にしている背景からは、深い思いが伝わってくる。
捨てられない衣装は「結束バンドのドレス」
パタンナーをしていた祖母の影響で、子どもの頃からファッションの虜だったと話すReiさん。 「会話のきっかけになるようなユニークなアイテムを意識して選んでいます」と差し出してくれたのは、ラフィアのようなパーツが全体にびっしりとあしらわれたAラインのドレス。よく見ると、その正体は無数の結束バンド!今年3月、老舗ギターメーカーのフェンダーが誇る名品、ストラトキャスターの誕生70周年を飾るMVで初めて袖を通した思い入れのある一着だ。 「いくつか候補はありましたが、これしかないなと見惚れました。結束バンドは、ギターの長いケーブルをまとめるための必需品。普段から演奏に使うシルバーパーツを指輪として取り入れてみたり、楽器に紐づいたモチーフをいかに着こなしの一部に落とし込めるか探求していて。ドレスらしいフェミニンな柔らかさだけでなく、インダストリアルなマテリアルで実用性を漂わせているところにもグッときたんです」 アーティストとして舞台に上がるときは、自身の音楽性に合うアバンギャルドなスタイルで臨んでいるという。自然とドラマティックなドレスや、ギターを抱えても隠れない襟元や裾に遊びが効いた衣装を選ぶように。こちらを製作したのは、廃材や造花、マスキングテープなど、あらゆる素材を用いてオートクチュールドレスを生み出す〈RITENUTObytac〉。着脱しやすく背中は開いた状態で、納品された袋には、留め具として使用する同型の結束バンドも一緒に入れられていた。 「細部までこだわりが行き届いていて素敵。ベースになったメッシュは裾に向かってゆるやかなドレープが入った理想的なシルエットで、それがまた心をくすぐるんです。昨今注目されているアップサイクルって、場合によっては環境へ配慮する目的に重きを置きすぎて、ちゃんとファッショナブルに昇華されているのかという難しさもあるけれど、サステイナビリティとおしゃれを巧妙に両立させている服だなと思います」 Reiさんは、なんと40本以上ものギターを所有しているとか。スペースが限られているため、気になる洋服も無尽蔵に増やすことはせず、一覧表を作り、アイテムごとに数を決めて取捨選択をしているとのこと。 「ステージ上では好きなものを身につけているので、衣装として出番がなくなっても私服とミックスしています。少数精鋭を愛する性分なので、このドレスとも大切に付き合っていきたい。まとうたびに自信が湧いてくるし、奮い立たされます。また特別な機会で着たいですね」 ●Rei レイ>> 4歳から培った巧みなギタープレイとヴォーカルが持ち味。2023年にはコリー・ウォンのゲストアクトとしてフジロックに参加し、話題に。24年10月現在、10都市を回る全国ツアーを開催中。 Photo_Shiori Ikeno Text_Erina Ishida Cooperation_Marvine Pontiak shirt makers, FUMIE TANAKA, GADID ANONIEM, EYTYS
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