「反論してくる若手」に高圧的に接しても、上司の権威は取り戻せない
部下や取引先生徒、家族など、「人を動かすにはどうすればいいのか」とお悩みの方は多いでしょう。人が目的地にたどりつくためには「エネルギー」が供給され続ける必要があり、コーチングではそのエネルギー供給のことを「アクノレッジメント(承認)」と言います。 では、若い部下や学生たちを動かすアクノレッジには、どのようなポイントがあるのでしょうか。 ※本稿は『「承認 (アクノレッジ) 」が人を動かす コーチングのプロが教える 相手を認め、行動変容をもたらす技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を一部抜粋・編集したものです。
権威と呼ばれた存在が、軒並み失墜している
以前、関東地方のある私立高校の先生全員に対してコーチングの研修を行ったことがあります。このとき、研修に先立って、生徒10人と先生10人に個別にインタビューを行いました。生徒は先生のことをどんなふうに思っているのか、反対に先生は生徒のことをどんなふうに思っているのか、それぞれの立場から話を聞きました。 20人の話からすべてが推測できるわけではありませんが、少なくともそこから次のような現場の風景が浮かびあがってきました。 ①生徒の多くは、昔のように先生の話に、とりあえず表向きだけでも素直に従うということをしない。 ②そのため、何とか言うことを聞かせようと、より高圧的に出て生徒を震えあがらせている先生がいる。 ③その一方で、とにかく生徒に「やさしく」接することで状況を改善しようと試みるものの、生徒をまったくコントロールできずに無力感に陥っている先生がいる。 ④このどちらかの極に多くの先生が偏っていて、状況に応じて生徒と効果的なコミュニケーションを交わせる人が少ない。 今、日本という社会の中でかつて権威と呼ばれた存在が、軒並み失墜してしまっています。昔ならば、先生から何かを言われれば、生徒は「先生」の言葉として受け止め、それなりの敬意を払い応じたものです。 しかし、今日、多くの生徒は先生から発せられる情報を簡単に権威付けたりしません。ですから、かつての自分の言葉の重みを同じように再現したいと望む先生は、より高みから物を言い、何とか表向きだけでも自分のプライドを守ろうとします。 一方、これは若い先生に多いようですが、生徒を理解しようとカウンセラー的なスタンスに立ち、とにかく傾聴に努めるのです。しかし生徒はたがが外れたかのように自由にふるまい、先生の言うことを聞きません。先生はどうしたら良いのかわからずに途方に暮れてしまいます。 もちろんすべての学校でそうだと言っているわけではありませんが、私が研修をさせていただいたいくつかの学校では、少なくともそうした現状があるようです。