「最後までジャイアンをやりきったんですね」 木村 昴が大先輩の声優から学んだことは
先代“ジャイアン”から教えてもらった大切なこと
木村は『ドラえもん』のジャイアン(剛田武)の2代目声優・たてかべ和也からの教えを大切にしているという。 木村:伝わるかわからないんですけど、お仕事とプライベートの線引きがまったくないんですね。お仕事が遊びだし、プライベートもお仕事って感じで。僕、昔からお仕事って言うのが好きじゃないですよ。個人的な感覚ですけど、全力を出すのにお仕事だろうがプライベートだろうが関係ないんですよ。好きでやっているからか、お仕事だって意識しちゃうと激冷めしちゃうんだよね。 吉岡:へええ! 珍しいと思います。 木村:かもね! たぶん、お仕事だから頑張っているっていう感覚が嫌なんだと思うんだよね。お仕事じゃなくても全力でやりたいし、プライベートだからのんびりするってことでもないんですよ。 吉岡:生き様なんですね。 木村:そうかも。話が飛ぶんだけど、僕がすごくリスペクトする先輩に、先代のジャイアン役だったたてかべ和也さんがいらっしゃるんです。この方がそういう生き方だったんですよ。プライベートもお仕事もない。バーベキューに行ったり海に行ったりとすごくよくしてもらっていて、生前はすごくお世話になりました。たまたま僕が通った高校がたてかべさんのお家の近所で、毎回体育祭と文化祭に来てくれたんですよ。 ジャイアンを演じるにあたり、木村はたてかべに相談をしたこともあったが、具体的なアドバイスはもらえなかったという。 木村:言い分としては「もうジャイアンは昴のものだから、俺が口出すことじゃねぇ。お前がやったことがジャイアンだ」ってことだったんです。高校3年生の文化祭に遊びに来たとき、俺は「たてかべさんが来たって紹介していいっすか?」と聞いたら「いいよ。こっそり行ってさくっと帰るよ。ジャイアンはお前のものだから」と言われたんです。それで、出し物が終わってたてかべさんを探したけど全然いなくって。結局ね、体育館でジャイアンの歌をめっちゃ歌ってたんですよ! 「ジャイアンはお前のものって嘘じゃん!」って思ったんだけど、その姿がカッコよかったの! 吉岡:めちゃくちゃいい話ですね。 木村:たてかべさんがお亡くなりになって、棺に横たわっている姿を見たら、オレンジのストライプのジャイアンTシャツで眠ってらっしゃったんですね。横にはジャイアンのぬいぐるみ。マイクもあってね。最後までジャイアンをやりきったんですねって思いました。それが僕の人生の大きなターニングポイントになる出来事だったんですよ。僕はたてかべさんに技術的なアドバイスを聞いていたんだけど、こういうことかと。「よし、今から〇〇をやるぞ」じゃなくて、どこに行っても俺、要は全力でやりきることがカッコいいんだろうなってそのときに思ったんです。俺もそういう風になりたいなってところから生まれた考え方かもね。 吉岡:めちゃくちゃカッコいいし、こうしたお話をしていただけたことが嬉しいです。勉強になりました。