漫画制作の裏話など紹介 「Dr.コトー」作者の山田貴敏さん 徳之島伊仙町で講演
代表作「Dr.コトー診療所」で知られる漫画家の山田貴敏さん(65)を招いた講演会が7日、鹿児島県伊仙町の徳之島交流ひろば「ほーらい館」であった。山田さんは創作や映画化の裏話などで60人の聴衆を魅了。自身の経験を例に「年齢は関係ない。夢はかなえられる」とエールを送った。 山田さんは岐阜市出身。大学在学中に漫画家デビューを果たした。「Dr.コトー」は離島で奮闘する医師の物語。03年にドラマ化、22年に映画化されるなど長年人気を博する。主人公のモデルが鹿児島県薩摩川内市下甑島の医師だったことから同市の観光大使にも任命されている。 講演会は伊仙町で島内の子どもたちを対象とした学習支援活動などを行っているNPO「UNiSONキノコにじいろクラブ」が主催。同NPOの芳村潔政代表(39)が、作業療法士として山田さんのリハビリを担当したことが縁となり講演会が実現した。 山田さんは講演の中で創作の秘訣(ひけつ)について「読者を引き付けるにはリアリティーが重要で自身の経験や取材が欠かせない。たくさん本を読んだり友達と遊ぶなど楽しい経験も積んでほしい」と助言した。 さらに月刊、隔週、週刊で連載して多忙だった時代を振り返り、「過労で倒れた時、編集者が家族と偽って集中治療室に入ってきて『原稿あと6ページ残っています』と告げた」などの逸話を紹介。「編集者って漫画家のことを人だと思っていませんから」と当時の苦労を笑い飛ばした。 受講した亀津小学校の児童は「山田さんが漫画家としてたくさんの苦労をしたことがヒット作につながったのだと分かった。将来、本に関わる仕事がしたいので私も勉強や読書を頑張りたい」と感想を述べた。 徳之島は初めてという山田さんは、「たくさんの離島を訪れたがこれほど海が美しい島は見たことがない。島内で情熱ある医師とも出会えた」と笑顔を見せ、「世の中には変わって良くなるものとそうでないものがある。この島は変わらないでいてほしい」と主人公コトーのせりふを引用して徳之島への思いを語った。