ロシア人の「Linux」カーネルメンテナーが排除--トーバルズ氏は何を語ったか
先ごろ、「Linux」カーネルの上級リーダーであるGreg Kroah-Hartman氏は、「さまざまなコンプライアンス要件」を理由に、ロシアのLinuxメンテナー数人が役割から外されたことをパッチで発表し、Linuxカーネルコミュニティーに衝撃が走った。「十分な文書が提供されれば、彼らは将来的に復帰することができる」と同氏は付け加えている。 Linuxコミュニティーの反応を要約すると、「何だって!?」ということになる。 どうやら全員ともロシア国籍である渦中の人々は、AcerやCirrus Logicのデバイスを含む重要なハードウェアLinuxドライバーのメンテナーだったのだ。 では、何が問題だったのか。そして、どうすれば問題を解決できるのか。その答えはすぐには得られなかった。そして、当然のことながら、オープンソースコミュニティーの中に憶測と不満が広がった。 Kroah-Hartman氏からそれ以上の説明はないが、Linuxの生みの親であるLinus Torvalds氏がLinux開発コミュニティーのメーリングリストであるLinux Kernel Mailing List(LKML)で自らの考えを明らかにした。 変更が行われた理由は完全に明らかで、元に戻されることはないし、ロシアのトロール工場(荒らし屋)が複数のランダムな匿名アカウントを使って 「草の根活動 」を試みても、何も変わらないだろう。 そして、トロール工場のアカウントではない実際の無実な傍観者のために参考までに言っておくと、「さまざまなコンプライアンス要件」は米国だけのものではない。 ロシアに対する制裁についてまだ聞いたことがないなら、ニュースを読んでみるべきだ。「ニュース」とは、ロシア政府が支援するスパムのことを言っているのではない。 Torvalds氏がここで言っているのは、2022年2月のウクライナ侵攻を受けたロシアに対する国際的な制裁措置のことだ。一部の報道に反して、メンテナーの追放は単に米国が推し進めているわけではない。Linuxは米国を拠点とする非営利団体Linux Foundationによってサポートされているが、カーネルのメンテナンスは世界的なグループによって行われている。つまり、地政学的な問題は時折、Linux Foundationをはじめとするオープンソースグループに影響を与えるということだ。 制裁措置と言えば、石油の輸出禁止、西側技術の輸入禁止などを考えるのが一般的だ。しかし時には、制裁が政治的・経済的権力から遠く離れた個人に影響を与えることもある。今回のケースがそうだ。 今回の措置によって、これらのメンテナーは公式な役割から外されたが、Linuxカーネルへの貢献が完全に禁止されたわけではない。彼らはまだ変更を提案し、復帰することができる。将来、まだ規定もされていない文書要件を満たせればだが。 オープンソースの世界では、われわれの多くは自分たちの作業は地政学的な問題とは無関係だと考えたがる。だが、このエピソードが示すように、そうではない。 この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。