福島県内５９市町村のうち、災害時に発生する廃棄物の処理計画を今年３月末時点で策定済みなのは３４市町村（５７・６％）、未策定なのは２５市町村（４２・４％）だった。策定済みの割合は全国平均の８０％を下回っている。災害時、廃棄物の処理が円滑に進まないとインフラの復旧や住民生活の再建を妨げる恐れがある。７月下旬に豪雨被害に遭った山形、秋田両県は全市町村が策定済みで、計画があったことで迅速な初動につながったという。専門家は「計画は災害対応に不可欠」と指摘している。 ■必要性高まる 　県内の策定状況は【表】の通り。国の津波避難対策特別強化地域に指定されている１０市町のうち相馬、富岡の２市町は未策定となっている。県は２０２５（令和７）年度末までに全市町村の策定を目指し、担当者向けに研修会を開くなどしている。 　処理計画は仮置き場の候補地や廃棄物の収集・分別・処分の方法などを定める。環境省が２０１８（平成３０）年に公表した対策指針で都道府県や市町村に策定を求めた。財政基盤が弱い小規模自治体向けに策定に必要な調査や分析などの経費の一部を補助している。

　環境省は日本海溝・千島海溝で巨大地震が起きた場合、東日本大震災の２倍に相当する最大４１１８万トンの災害廃棄物が発生するとの推計を示しており、計画の必要性は一層高まっている。 ■経験則で対応 　近年の台風や福島県沖地震で相次ぎ被災した相馬市は災害復旧を優先してきたため、策定できずにいるという。担当者は「これまでの災害対応の経験があるため近年の災害対応に大きな問題はなかったと考えているが、今後の激甚災害に備えて今年度内に策定したい」と話す。 　未策定の市町村を地域別に見ると、会津と県南が目立つ。根底には人手不足があり、策定業務が後回しになっている。国は計画のひな形を示し、必要に応じて人材を派遣し助言・指導に当たるとしているが、「支援があってもハードルが高いと感じる」（磐梯町・小野町）との声も出ている。 ■定期的な見直し 　７月２４日から２５日かけての豪雨災害により山形県の酒田市や戸沢村では最上川の氾濫などで大きな被害が出た。それぞれ約３００棟が浸水したが、発災から３日程度で廃棄物の仮置き場を開設できた。策定していた計画が生きたという。