エジプト騒乱、落としどころは?/暫定政府とムスリム同胞団の出方に注目
エジプト暫定政府は首都カイロで座り込みを続けていたデモ隊の強制排除に乗り出し、8月14日以降、治安部隊とデモ隊の衝突で数百人の死者が出たと伝えられています。この混迷状態を脱する落としどころはあるのでしょうか。(THE PAGE 編集部)
対立の構図
【六辻彰二/国際政治学者】 エジプトでは2011年2月、独裁的なムバラク政権が、市民の抗議活動によって崩壊。民主的な選挙を経て、2012年6月にイスラーム組織・ムスリム同胞団出身のモルシ氏が大統領に就任しました。しかし、失業率の上昇や治安の悪化、さらにイスラーム色の強い新憲法に対する不満から、今年6月にはリベラル派などによる反モルシの抗議デモが全土に拡大。これに、かつてムバラク政権を支持していた軍が協力する形で、7月にクーデタが発生したのです。 軍の主導で発足した暫定政府には、旧体制支持者やリベラル派の他、ムスリム同胞団以外のイスラーム組織も協力する立場を表明。暫定政府はムスリム同胞団にも対話を呼びかけましたが、軍によってモルシ氏ら幹部が相次いで拘束されたこともあり、ムスリム同胞団はこれを拒絶。民主的な選挙で選出されたモルシ政権の正当性を強調し、その復権を要求したことで、双方の対立は決定的なものになりました。
暫定政府の内部に温度差
ムスリム同胞団の支持者による抗議の座り込みが続くなか、これを力ずくで排除することは、国内の分裂を決定付けるのみでなく、慎重な対応を求める欧米諸国との関係を悪化させかねない選択でした。そのため、暫定副大統領に就任していたエルバラダイ元IAEA(国際原子力機関)事務局長などのリベラル派は、強制排除に消極的な姿勢を示していました。 しかし、拘束を免れたムスリム同胞団幹部らが抵抗の意志を鮮明にし、さらに米国やEUによる仲介が効果をあげられないなか、強硬派の軍は強制排除に踏み切ったのです。14日、強制排除に抗議して、エルバラダイ氏は暫定副大統領を辞職しました。