センバツ2024 粘る航空石川、あと一歩届かず 競り勝つ星稜、全員野球で8強入り /石川
阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開かれている第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)は第6日の25日、石川県勢2校が登場。1回戦最後の試合で日本航空石川が常総学院(茨城)と対戦したが、あと1本が出ず0―1で惜敗し、第90回大会(2018年)以来の春1勝はかなわなかった。続いて行われた2回戦で、星稜は八戸学院光星(青森)に3―2で競り勝ち、第94回大会以来2年ぶりの8強進出を決めた。星稜は大会第9日(28日)の第1試合で阿南光(徳島)と対戦する。【野原寛史、小坂春乃、中田博維、山口敬人】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち ◇ガンバレ能登!!スタンド一丸 雨天で2日順延し、月曜の試合となった日本航空石川の初戦。それでも選手たちを後押ししようと、学校関係者や保護者、毎年練習試合をしている輪島高の野球部員ら約2400人の応援団がアルプススタンドを埋めた。 先発は2年生左腕の猶明光絆(ゆうめいこうき)。父の享さん(40)は試合前、「被災した能登と(出身地の)富山県氷見市を元気づける投球をしてほしい」と話し、初回を無失点で切り抜けると立ち上がって大きな拍手を送った。 能登半島地震で校舎が被災し、避難先の山梨県で練習を重ねてきた選手たち。試合は両チームとも好守が相次ぐ引き締まった展開が続いた。六回に犠飛で先制を許すが、スタンドで応援する野球部員の大藤宏太朗さん(3年)は「うちは粘り強い野球が持ち味。ここから逆転します」と意気込み、一層大きな声でチームを鼓舞した。 九回裏、主将の宝田一慧(ほうだいっけい)(3年)が無死から四球で出塁し、盗塁で好機を広げる。段日向樹(ひなき)(3年)がこの日3本目の安打で1死一、三塁の同点機を作るとスタンドの熱気は最高潮に。しかし、後続が併殺に倒れゲームセット。応援団は一瞬静まりかえったが、すぐに「よく頑張った」と拍手を送った。 宝田の父、裕通さん(49)は「メンバーもなかなかそろわない中で、こうしてチームがまとまって(プレー)できたことを褒めてやりたい」と話し、被災や避難生活を乗り越えて聖地で躍動したナインをねぎらった。 ◇96人迫力の演奏 山梨、滋賀から友情応援 日本航空石川のアルプススタンドには、同校と系列校の日本航空(山梨)、そして同じくセンバツに出場していた近江(滋賀)の3校の吹奏楽部計96人が集結。大迫力の演奏でナインを後押しした。 日本航空石川のセンバツ出場が決まったため、吹奏楽部員も3月上旬に山梨キャンパスへ移り、約2カ月ぶりに全体練習を再開。合同応援が決まっていた山梨の吹奏楽部員と練習を重ねてきた。そこに、教員同士で交流のあった近江から「被災地を励ましたい」と友情応援の提案があり、同校での練習を経て合同バンドを結成した。 試合中は「航空オーレ」など同校の定番曲に加え、知名度の高い近江のチャンステーマ「Fire ball」も演奏。主将の宝田一慧(3年)は「聞こえた時は本当に興奮して力になった」と話し、4番打者の荒牧拓磨(3年)も「本当に心に響くいい音楽だった」と感謝した。 日本航空石川の吹奏楽部長・九尾結月さんは「山梨と近江の皆さんの協力で、こんなに素晴らしい球場で演奏ができたことに感謝したい」と、感動の面持ちで語った。【野原寛史】 ◇競り勝つ星稜 全員野球で8強入り ブラバン懸命の後押し 一回1死二塁の先制機。「コンパクトな打撃を意識した」という主将・芦硲晃太(3年)の鋭い打球が中前への適時打に。「初戦で打てなかったので一本出て良かった」と父太輔さん(44)を喜ばせると、さらに2死一、二塁と広げた好機で能美誠也(2年)が中前にはじき返して2点目。鮮やかな先制攻撃で主導権を握った。 1回戦の田辺(和歌山)戦では一つの遊直を含めて飛球によるアウトが15個を数えた。試合後のミーティングで選手から「もっと低く強い打球を打たないと」という声があがり、翌日以降の練習では意識的に低い打球を打つ練習を繰り返した。 三回に追い付かれたがブラスバントが懸命の演奏で後押し。2日連続の雨天順延の影響で早朝集合が続き、体調を崩す吹奏楽部員が続出。参加者は初戦の55人から27人に半減したが、新3年で部長の千葉未来さんは「人数は少ないけど前回に劣らない応援で選手を支えたい」。 その応援に乗り、六回2死二塁の好機に中島幹大(3年)が、詰まりながらも左前に落として勝ち越し。中島は初戦に途中出場で2安打を放っており、「調子のいい打者を使おう」(山下智将監督)との先発起用に応えた。そのリードを佐宗翼(同)が141球の粘り強い投球で守り切った。2戦目で硬さも消えエンジンがかかってきた。エース左腕は「次も全員野球で勝てたら」と頼もしかった。