いただく命に感謝 地域の情景伝える「生き物供養碑」を調査 滋賀・琵琶湖博物館
奈良文化財研究所(奈良市)の上椙(うえすぎ)英之研究員が開発した技術で、昨年スマートフォン向けのアプリがリリースされ、誰でも利用することが可能になった。
データ化により、碑文の文字は「種々諸悪趣地 獄鬼畜生々老 病死苦以漸 悉令滅」と判明。調査に同行した地元の書道文化の博物館「観峯館」の寺前公基学芸員によると、「観音経」の一節だという。
■情報提供呼びかけ
鳰戸霊泉は愛知川の伏流水の湧水で、上流にダムが建設されてからは自噴能力がなくなり、現在は揚水ポンプでくみ上げている。それでも、地元の料亭がコイやウナギを放つなど風習は細々ながら残っており、後藤住職は「食べ尽くすのではなく、おすそ分けをして命に感謝する放生の心を碑は伝えている」と話す。
橋本学芸員は「琵琶湖地域で暮らしていた人々が、どのように生き物と折り合いをつけてきたかが浮き彫りになってきている」と手応えを語る。大河原さんは「供養碑かどうかはっきりしないような碑でもいいので、気軽に情報を寄せてほしい」と呼びかけている。(川西健士郎)