墓前で感じた物価高、なぜ 世相あれこれ「墓参り川柳」24年入選作
「お供えの 数で感じる 物価高」――。石材店などでつくる一般社団法人「全国優良石材店の会」(東京都品川区)は27日、「墓参り」をテーマに募集した川柳の入選作品を公表した。全国から寄せられた約1万2500作品から10作品を選出。2024年の世相を盛り込んだユーモアあふれる作品が出そろった。 「輝きは メダルに負けぬ 墓磨き」(岐阜県恵那市の女性) 今夏のパリ・オリンピックでは日本選手が計20個の金メダルを獲得する活躍をみせた。墓の掃除を終えた達成感に浸る気持ちをメダルで表現した。 「新札と 孫をお披露目 墓参り」(横浜市の男性) 7月には20年ぶりに新紙幣が発行された。渋沢栄一らが描かれた新デザインと、家族の新顔を先祖に紹介する情景を詠んだ。 「故郷も 過半数割れ 参る墓」(大阪府茨木市の男性) 裏金問題に揺れた10月の衆院選は、自民・公明の与党が過半数割れの結果となった。故郷の過疎化が進み、墓参りに訪れる人が減ったことを残念に思う気持ちを表した。 「お供えの 数で感じる 物価高」(大阪府吹田市の女性) 今年も食料品や電気代などの値上がりが家計を圧迫した。供える花や線香、飲食物などの数や種類が減った様子に、物価高の波を感じ取ったようだ。 「先祖あり 故に我あり 墓があり」(静岡県駿東郡の男性) 核家族化などで管理が難しくなった墓を撤去する「墓じまい」が増えている。厚生労働省の調査によると、墓じまいを含む改葬は22年度、過去最多の15万件超に上った。それでも、墓参りが自身の存在を見つめ直す契機になっている人もおり、墓の大切さを詠んだ。 川柳を企画した全国優良石材店の会によると、最近は正月に新年のあいさつで墓参りする人も多いという。担当者は「今風のちょっとほほえましい秀逸な作品がそろった」と評した。【嶋田夕子】 ◇ その他の入選作品は次の通り。 「夫婦別姓 変わらぬ絆 一つ墓」(埼玉県桶川市の男性)▽「墓参り ネッククーラー 巻いたまま」(山口県下関市の男性)▽「花添えて 映(ば)えるお墓を 子に送る」(東京都武蔵野市の女性)▽「手を合わす 孫見て止(や)めた 墓じまい」(長野県駒ケ根市の男性)▽「もう一度 叱ってほしくて 墓参り」(静岡県伊豆の国市の男性)