「次のパンデミック」に備えるために。5年後にむけて私がやらなければならないこと【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】
連載【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】第27話 新型コロナ研究の約3年間でやりたくてもできなかった若手研究者の育成。今回、長期にわたる研究費の支援が決まり、筆者が主宰するG2P-Japanは、国際共同研究のさらなる推進に加えて、人材育成にいよいよ本腰を入れる。 * * * ■「国際先導研究」と「ASPIRE」 昨年末に、うれしい、そして驚きの知らせが届いた。それもふたつ、である。 私が申請していた、日本学術振興会が公募する「国際先導研究」と、日本医療研究開発機構(AMED)が公募する「先端国際共同研究推進プログラム(ASPIRE)」というふたつの大型の研究費が、なんとどちらも採択されたのだ。 毛色は違うが、どちらの研究費も、国際共同研究の推進と、若手研究者の育成を軸にしたものである。そして、このふたつの研究費に共通するのは、その支援期間の長さ、である。どちらも今年度から始まり、「国際先導研究」は7年間、「ASPIRE」は6年間、支援が続く。 これまで、私のラボ、および、研究コンソーシアムG2P-Japanの活動は主に、AMEDが公募する、新型コロナ研究に特化した研究費で支援されていた。この連載コラムの第6話でも紹介したことがあるが、この研究費がなければ、G2P-Japanを立ち上げることもできなかったし、その活動を継続することもできなかった。 そういう意味では、この研究費に支援いただけたのはとてもありがたかったのだが、この研究費にはひとつ、大きな欠点があった。支援期間が1年間しかないのである。支援期間が1年間の研究費が毎年公募され、それに申請し、審査され、採択される、ということを3年間続けた。 「それなら、実質3年間支援してもらったわけでしょ」と思う方もいるかもしれない。結果的にはそうなのだが、このような公募形態になっていたことによって、実現がほぼ不可能になっていたことがある。人材育成である。 考えてもみてほしい。「予算があるので、人材を募集します。でも予算が1年間しかないので、任期は1年間です」という求人が出たとして、そんなところで働きたいと思うだろうか? そういうわけで、これまで私たちは、新型コロナ研究に特化した1年間の研究費を毎年食いつなぐことで、新型コロナ研究を推進することができた。しかしそこに、若い研究者たちの参加を募り、研究分野を底上げすることができなかったのだ。 これまでなかなか叶わなかった、若手研究者の育成。それが、この「国際先導研究」と「ASPIRE」というふたつの研究費を獲得したことによって、ついに可能となったのである。